ツルゲーネフ 人名

13/12/2014 16:13

[Ivan Sergeevich Turgenev]
ロシア小説家。地主貴族の子に生まれ、農奴解放前後の古い貴族の意識と、改革の理想を持つ新しい世代との対立を基調に、農奴制や余計者、女性の自立などの社会問題をすぐれた詩人的感性で捉え、多くの長編を残す。人道主義に立って社会問題を取り上げる一方、叙情豊かにロシアの田園を描いた。生涯の大半をヨーロッパで過ごし、ロシア文学の西欧への紹介者としても活躍。二葉亭四迷の訳で早くから日本に紹介された。著「猟人日記」「ルージン」「貴族の巣」「初恋」「その前夜」「父と子」「処女地」「散文詩」など。トゥルゲーネフ

用例

 このあいびき先年仏蘭西《フランス》死去した露国では有名な小説家ツルゲーネフという端物《はもの》です今度徳富先生依頼訳してみました訳文我ながら不思議とソノ何んだこれでも原文きわめておもしろいです
 九月中旬というころ一日自分さる座していたことあッた今朝から小雨降りそそぎその晴れ間にはおりおり生ま煖《あたた》かな日かげ射してまことに気まぐれな空ら合いあわあわしい白ら雲空ら一面棚引くかと思うとフトまたあちこち瞬く間雲切れしてむりに押し分けたような雲間から澄みて怜悧《さか》し気《げ》に見えるごとくに朗《ほがら》かに晴れた蒼空のぞかれた自分座して四顧してそして傾けていた木の葉頭上幽《かす》かに戦《そよ》いだその聞たばかりでも季節知られたそれ春先するおもしろそうな笑うようなさざめきでもなくゆるやかなそよぎでもなく永たらしい話し声でもなくまたおどおどしたうそさぶそうなお饒舌《しゃべ》りでもなかッたただようやく聞取れる聞取れぬほどしめやかな私語であったそよ吹く忍ぶように木末伝ッた照る曇るじめつくようす間断なく移り変ッたあるいはそこありとあるすべて一時微笑したように隈なくあかみわたッてさのみ繁くないほそぼそとした思いがけず白絹めくやさしい光沢《つや》帯び地上散り布《し》いた細かな落ち葉にわかに映じてまばゆきまでに金色《こんじき》放ち頭《かしら》かきむしッたような「パアポロトニク」(類いみごとなしかも熟《つ》えすぎた葡萄めく帯びた際限なくもつれからみして目前透かして見られた
ツルゲーネフ作、二葉亭四迷訳「あひゞ」1888、冒頭