有名な(ゆうめいな) 活用形

24/10/2017 17:42

→「ゆうめいな(有名な)

用例

 九月中旬というころ一日自分さる座していたことあッた今朝から小雨降りそそぎその晴れ間にはおりおり生ま煖《あたた》かな日かげ射してまことに気まぐれな空ら合いあわあわしい白ら雲空ら一面棚引くかと思うとフトまたあちこち瞬く間雲切れしてむりに押し分けたような雲間から澄みて怜悧《さか》し気《げ》に見えるごとくに朗《ほがら》かに晴れた蒼空のぞかれた自分座して四顧してそして傾けていた木の葉頭上幽《かす》かに戦《そよ》いだその聞たばかりでも季節知られたそれ春先するおもしろそうな笑うようなさざめきでもなくゆるやかなそよぎでもなく永たらしい話し声でもなくまたおどおどしたうそさぶそうなお饒舌《しゃべ》りでもなかッたただようやく聞取れる聞取れぬほどしめやかな私語であったそよ吹く忍ぶように木末伝ッた照る曇るじめつくようす間断なく移り変ッたあるいはそこありとあるすべて一時微笑したように隈なくあかみわたッてさのみ繁くないほそぼそとした思いがけず白絹めくやさしい光沢《つや》帯び地上散り布《し》いた細かな落ち葉にわかに映じてまばゆきまでに金色《こんじき》放ち頭《かしら》かきむしッたような「パアポロトニク」(類いみごとなしかも熟《つ》えすぎた葡萄めく帯びた際限なくもつれからみして目前透かして見られた
ツルゲーネフ作、二葉亭四迷訳「あひゞ」1888、冒頭
 
シャルヽ・ペロー童話赤頭巾といふ名高いあります既に御存知とは思ひます荒筋申上げます赤い頭巾かぶつてゐるので赤頭巾呼ばれてゐた可愛い少女いつもやうにお婆さん訪ねて行くお婆さん化けてゐて赤頭巾ムシャムシャ食べてしまつたといふでありますまつたくたゞそれだけであります
 
童話といふものには大概教訓モラルといふもの有るものですこの童話にはそれ全く欠けてをりますそれでその意味からアモラルであるといふこと仏蘭西では甚だ有名な童話でありさういふ引例場合屡々引合ひ出されるので知られてをります
 
童話のみではありません小説全体として見てもいつたいモラルない小説といふのがあるでせうか小説家立場としてもなにかモラルさういふもの意図なくて小説書きつゞける――さういふこと有り得ようとはちよつと想像できません
 
ところがこゝ凡そモラルといふもの有つて始めて成立つやうな童話全然モラルない作品存在するしかも三百ひきつゞいてその生命持ち多く子供多く大人生きてゐる――これ厳たる事実であります
坂口安吾文学ふるさと」1941、冒頭
 日曜午前十時三階花子部屋ではニコライ堂鐘の音よくきこえた狭い部屋汚ながる山川に対して、花子その思いもかけぬ西洋風な音色だけ自慢できるしたカランコロンと鐘の音のびやかにひびきわたってくるその方角あった少しはなれて建っている裏手三階かくれてドォム見えないなる高々と中空かがやきだすドォム十字架青色ネオンむろんそこからは見られなかった日曜その時刻その目をさますことなければここ有名な教会堂あたりとは気づかぬにちがいないそれほどこの部屋ありさま白々と清潔な延ばしている聖《ひじり》橋や、重々しく四角ばってうずくまる湯島聖堂それに異国風な緑色ふくらんでいる教会丸屋根その一角ひろびろと打ち展《ひら》かれた美しい風景とは似ても似つかぬものであった
武田泰淳部屋1951冒頭
[発表年未詳・筆者生年順]
 
千九百二十三七月独逸出てから和蘭白耳義経て再びパリはひつた其処美術館見た目ぼしいもの見なほしたり見のこして置いたもの見たりするのが主たる目的だつたその二十七午後ルーヴル玄関はひつて直ちに折れ、Galerie Mollien突当つて同じ負ふ階段二階上り左折して仏蘭西初期画廊入る間もなく三階上る階段踏んでCollection Camondo到達したそれ千九百十一死んだキャモンド蒐集印象派絵画を以て有名なものであるさうしてこの蒐集には東洋芸術遺品相応にまじつてゐるのである
阿部次郎(1883-1959)「帰来冒頭