一段(いちだん)

23/11/2014 11:17

→「いちだん(一段)

用例

十八殉死したときには、弥一右衛門は奉公していたのに殉死しない言って家中もの卑しんださてわずかに二三隔てて弥一右衛門は立派に切腹したが、当否措いて一旦受けた侮辱容易に消えがたく誰も弥一右衛門を褒めるものないでは弥一右衛門の遺骸霊屋《おたまや》かたわら葬ること許したのであるから跡目相続にも強いて境界立てずにおいて殉死者一同同じ扱いしてよかったのであるそうしたなら阿部一族面目施してこぞって忠勤励んだのであろうしかるに一段下がった扱いしたので家中ものの阿部侮蔑公《おおやけ》に認められたなった。権兵衛兄弟次第に傍輩《ほうばい》にうとんぜられて怏々として送った
森鷗外阿部一族」1913)
ちょうど卯の花真っ白に咲いている小さい枝折戸あるあけてはいって、権右衛門芝生突居た。光尚見て、「負った一段骨折りであったかけた黒羽二重衣服血みどれなってそれに引上げとき小屋踏み消したとき飛び散ったまだらについていたのである
いえかすり創でござりまする」権右衛門何者か水落したたかつかれた懐中していたあたって穂先それたわずかに鼻紙にじませただけである
森鷗外阿部一族」1913)
去年小林秀雄水道橋プラットホームから墜落して不思議な助かつたといふきいた泥酔して一升ビンぶらさげて酒ビンと一緒に墜落したこのきいた心細くなつたものだそれ小林といふ人物煮ても焼いても食へないやうな骨つぽいそしてチミツな人物心得あのだけ自動車ハネ飛ばされたり落つこつたりするやうなことないだらう思ひこんでゐたからそれといふ人間自動車ハネ飛ばされたり落つこつたりしすぎるからのアコガレ的な盲信でもあつた思へば然しかう盲信したのは甚しい軽率で自身過去事実に於いて最もかく信ずべからざる根拠与へられてゐたのである
十六七こと越後親戚仏事ありモーニング着て東京でた上野駅偶然小林秀雄一緒なつた新潟高校講演行くところ二人上越線食堂車のりこみ下車する越後川口といふ小駅までのみつゞけたやうに弱いには食堂車ぐらゐ快適なないので常に身体ゆれてゐるから消化してもたれることなく気持よく酔ふことができる酔つた小林酔つた小林仏頂面似合はず本心やさしい親切なから下車するくるあゝ持つてやると云つて荷物ぶらさげて先に立つて歩いたそこで小林ドッコイショ踏段おいた荷物ありがたうぶらさげて下りて別れたのである山間小駅さすがに人間乗つたり降りたりしないところと思つて感心した第一駅員ゐやしない人ッ子一人ゐないこれ徹底的にカンサンなあるもの人間乗つたり降りたりしないものだからホーム何尺ありやしない背中すぐ貨物列車あるそのうち小林乗つた汽車通りすぎてしまふ汽車なくなつた向ふ側よりも一段高いホンモノプラットホーム現はれた人間だつてたくさんウロウロしてゐらああのとき呆れたプラットホーム反対側降りたわけではないので小林秀雄下ろしたのである
坂口安吾教祖文学」1947、冒頭