大勢(おおぜい)

09/08/2013 17:11

→「おおぜい(大勢)

用例

五六寄って火鉢囲みながらしていると、突然一人青年来た聞かず会った事もない全く未知である紹介状携えずに取次通じて面会求めるので座敷招じたら青年大勢いるへ、山鳥提げて這入って来た初対面挨拶済むと、その山鳥真中出してから届きましたからといってそれ当座贈物した
夏目漱石「山鳥」『永日小品』1909、冒頭)
数馬傍輩から、外記自分推してこのたび当らせたのだ聞くや否や即時に討死しよう決心したそれどうしても動かすこと出来ぬほど堅固な決心であった。外記ご恩報じさせると言ったということであるこのはからず聞いたのであるが実は聞くまでもない、外記薦めるにはそう言って薦めるにきまっているこう思う、数馬立ってもすわってもいられぬような気がする自分先代引立てこうむったには違いないしかし元服してからのち自分いわば大勢近習うち一人別に出色扱い受けていないには誰も浴しているご恩報じ自分に限ってしなくてはならぬというのはどういう意味言うまでもない自分殉死するはずであったのに殉死しなかったから命がけ場所やるというのである何時でも喜んで棄てるさきにしおくれた殉死代りに死のうとは思わない惜しまぬ自分なんで先代中陰果て惜しんだであろういわれないことである畢竟どれだけ入懇になった殉死するというはっきりしたない同じように勤めていた近習若侍うちに殉死沙汰ないので自分ながらえていた殉死してよいことなら自分よりもさきにするそれほどことにも見えているように思っていたそれにとうにするはず殉死せずにいた人間として極印打たれたのはかえすがえすも口惜しい自分すすぐこと出来ぬ汚れ受けたそれほど加えることあの外記でなくては出来まい。外記としてはさもあるべきことであるしかし殿様なぜそれお聴きいれになった。外記傷つけられたのは忍ぶこと出来よう殿様棄てられたのは忍ぶこと出来ない島原乗り入ろうとしたとき先代お呼び止めなされたそれ馬廻りものわざと先手加わるお止めなされたのであるこのたび当主怪我するなおっしゃるのはそれとは違う惜しいいたわれおっしゃるのであるそれなんのありがたかろう古い新たに鞭うたれるようなものであるただ一刻早く死にたい死んですすがれる汚れではない死にたい犬死でもよいから死にたい
森鷗外阿部一族」1913)
北側けちな並べていて一番体裁好い板塀繞らした小さいしもた屋その外手職するなんぞ住いであった荒物屋烟草屋しかなかった往来目に附く裁縫教えている昼間格子窓大勢集まって為事していた時候好くて明けているとき我々学生通るいつもべちゃくちゃ盛んにしゃべっている挙げて往来見るそしてし続けたり笑ったりするその格子戸綺麗に拭き入れて上がり口叩き御影石塗り込んだ折々夕方通って見ると打水してあるあった寒い障子締めてある暑い竹簾卸してあるそして為立物師賑やかな為めにこのいつも際立ってひっそりしているように思われた
森鷗外」1913)