アルファベット順
までに(迄に) 連語
17/04/2012 10:52
1.
動作・作用・事態などの至り及ぶ程度を表す。…ほど(に)。…くらいに。
敵を完膚なきまでに叩きのめす
2.
動作・作用・事態などがそれに限られ、それ以上には及ばない意を表す。…に過ぎない。
一言御挨拶までに申し上げました ほんのお見舞いのしるしまでに持参致しました
3.
動作・作用・事態などの及ぶ限度、及んだ結果を表す。
総工費は総額2000億円までに達した
4.
動作・作用・事態などの至り及ぶ期限・限度・範囲を表す。…までの間に。…に至るまで。…まで。
金曜までにレポートを出さなければならない 原稿が全部出来上がる―は、まだ少し時間がかかる
5.
ある事態の至り及ぶ時間的・空間的限界を表す。
5.
ある事態の至り及ぶ時間的・空間的限界を表す。
用例
1.
このあいびきは先年仏蘭西《フランス》で死去した、露国では有名な小説家、ツルゲーネフという人の端物《はもの》の作です。今度徳富先生の御依頼で訳してみました。私の訳文は我ながら不思議とソノ何んだが、これでも原文はきわめておもしろいです。
秋九月中旬というころ、一日自分がさる樺の林の中に座していたことがあッた。今朝から小雨が降りそそぎ、その晴れ間にはおりおり生ま煖《あたた》かな日かげも射して、まことに気まぐれな空ら合い。あわあわしい白ら雲が空ら一面に棚引くかと思うと、フトまたあちこち瞬く間雲切れがして、むりに押し分けたような雲間から澄みて怜悧《さか》し気《げ》に見える人の眼のごとくに朗《ほがら》かに晴れた蒼空がのぞかれた。自分は座して、四顧して、そして耳を傾けていた。木の葉が頭上で幽《かす》かに戦《そよ》いだが、その音を聞たばかりでも季節は知られた。それは春先する、おもしろそうな、笑うようなさざめきでもなく、夏のゆるやかなそよぎでもなく、永たらしい話し声でもなく、また末の秋のおどおどした、うそさぶそうなお饒舌《しゃべ》りでもなかッたが、ただようやく聞取れるか聞取れぬほどのしめやかな私語の声であった。そよ吹く風は忍ぶように木末を伝ッた。照ると曇るとで、雨にじめつく林の中のようすが間断なく移り変ッた。あるいはそこにありとある物すべて一時に微笑したように、隈なくあかみわたッて、さのみ繁くもない樺のほそぼそとした幹は思いがけずも白絹めく、やさしい光沢《つや》を帯び、地上に散り布《し》いた、細かな、落ち葉はにわかに日に映じてまばゆきまでに金色《こんじき》を放ち、頭《かしら》をかきむしッたような「パアポロトニク」(蕨の類い)のみごとな茎、しかも熟《つ》えすぎた葡萄めく色を帯びたのが、際限もなくもつれつからみつして、目前に透かして見られた。(ツルゲーネフ作・二葉亭四迷訳「あひびき」1888、冒頭)
1.3.
懷疑の意味を正確に判斷することは容易でないやうに見える。或る場合には懷疑は神祕化され、それから一つの宗教が生ずるまでに至つてゐる。あらゆる神祕を拂ひのけることが懷疑の仕事であるであらうに。反對に他の場合には如何なる懷疑も懷疑であるといふ理由で容赦なく不道徳として貶せられてゐる。懷疑は知性の一つの徳であり得るであらうに。前の場合、懷疑そのものが一つの獨斷となる。後の場合、懷疑を頭から敲きつけようとするのもやはり獨斷である。
(三木清「懷疑について」『人生論ノート』1941、冒頭)
3.
1.3.
懷疑の意味を正確に判斷することは容易でないやうに見える。或る場合には懷疑は神祕化され、それから一つの宗教が生ずるまでに至つてゐる。あらゆる神祕を拂ひのけることが懷疑の仕事であるであらうに。反對に他の場合には如何なる懷疑も懷疑であるといふ理由で容赦なく不道徳として貶せられてゐる。懷疑は知性の一つの徳であり得るであらうに。前の場合、懷疑そのものが一つの獨斷となる。後の場合、懷疑を頭から敲きつけようとするのもやはり獨斷である。
(三木清「懷疑について」『人生論ノート』1941、冒頭)
3.
4.
我が紐を妹《いも》が手もちて結八《ゆふや》川またかへり見む万代《よろづよ》までに
御作《おさく》さんは起きるが早いか、まだ髪結は来ないか、髪結は来ないかと騒いでいる。髪結は昨夕《ゆうべ》たしかに頼んでおいた。ほかさまでございませんから、都合をして、是非九時までには上りますとの返事を聞いて、ようやく安心して寝たくらいである。柱時計を見ると、もう九時には五分しかない。どうしたんだろうと、いかにも焦れったそうなので、見兼ねた下女は、ちょっと見て参りましょうと出て行った。御作さんは及び腰になって、障子の前に取り出した鏡台を、立ちながら覗き込んで見た。そうして、わざと唇を開けて、上下《うえした》とも奇麗に揃った白い歯を残らず露わした。すると時計が柱の上でボンボンと九時を打ち出した。御作さんは、すぐ立ち上って、間《あい》の襖を開けて、どうしたんですよ、あなたもう九時過ぎですよ。起きて下さらなくっちゃ、晩くなるじゃありませんかと云った。御作さんの旦那は九時を聞いて、今床の上に起き直ったところである。御作さんの顔を見るや否や、あいよと云いながら、気軽に立ち上がった。
(夏目漱石「人間」『永日小品』1909、冒頭)
5.
大刀《だいとう》老人は亡妻の三回忌までにはきっと一基の石碑を立ててやろうと決心した。けれども倅の痩腕《やせうで》を便《たより》に、ようやく今日《こんにち》を過すよりほかには、一銭の貯蓄もできかねて、また春になった。あれの命日も三月八日だがなと、訴えるような顔をして、倅に云うと、はあ、そうでしたっけと答えたぎりである。大刀老人は、とうとう先祖伝来の大切な一幅を売払って、金の工面をしようときめた。倅に、どうだろうと相談すると、倅は恨めしいほど無雑作にそれがいいでしょうと賛成してくれた。倅は内務省の社寺局へ出て四十円の月給を貰っている。女房に二人の子供がある上に、大刀老人に孝養を尽くすのだから骨が折れる。老人がいなければ大切な懸物も、とうに融通の利くものに変形したはずである。
(夏目漱石「懸物」『永日小品』1909、冒頭)5.
ありつつも君をば待たむうちなびく我が黒髪に霜の置くまでに
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