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や否や(やいなや) 連語

10/10/2012 08:21

やいなや(や否や)

用例

「アハハハまた始まった。君は余計な事を云いに生れて来た男だ。さあ行くぜ」と太い桜の洋杖を、ひゅうと鳴らさぬばかりに、肩の上まで上げるや否や、歩行き出した。瘠せた男も手巾を袂に収めて歩行き出す。
夏目漱石虞美人草」1907)
高い建物当って思うごとく真直《まっすぐ》抜けられないので急に稲妻折れてから、斜《はす》舗石《しきいし》まで吹きおろして来る自分歩きながら被っていた山高帽抑えた客待御者一人いる御者台から、この有様眺めていた見えて自分帽子から離して姿勢正すや否や人指指《ひとさしゆび》立てた乗らないかと云う符徴である自分乗らなかったすると御者拳骨固めて烈しく辺《あたり》打ち出した二三離れて聞いていてもとんとんする倫敦《ロンドン》御者こうして己れわが暖めるのである自分ふり返ってちょっとこの御者見た剥げ懸った堅い帽子から、侵された厚い髪の毛食《は》み出している毛布《ケット》継ぎ合せたような粗い外套背中その張って平行なるまで怒らしつつとんとん敲いているまるで一種器械活動するようである自分再び歩き出したВятърът се блъска във високите сгради и понеже не може да продължи направо, както му се иска, пречупва се внезапно, подобно на светкавица и се спуска диагонално над главата ми чак до каменната настилка на пътя. Докато вървях, с дясната си ръка притиснах бомбето, което бях нахлупил. Напред има файтонджия, който чака клиенти. Изгледжа ме бе наблюдавал в това ми състояние от мястото си отпред на файтона, защото едва отделих ръка от шапката си и се изправих и веднага повдигна показалец. Няма ли да се качите – казва жестът му. Аз не се качих. Тогава файтонджията стисна дясната си ръка здраво в юмрук и започна ожесточено да се удря в гърдите. Дори и отдалечил се вече на 4-5 метра, все още се чува потупване. По този начин файтонджиите в Лондон затоплят тялото и ръцете си. Извърнах глава назад и погледнах въпросния файтонджия. Под поизтрилата се твърда шапка се подава гъста прошарена коса. Издърпва лакът назад в дясно от гърба на съшитото си сякаш от одеала грубо кафяво палто и повдигайки го докато застане на една линия с рамото, пак и пак потупва гърдите си. Досущ като някаква машина. Закрачих отново.
夏目漱石「暖かい夢」『永日小品』1909、冒頭)
御作《おさく》さん起きるが早いかまだ髪結来ないか、髪結来ないかと騒いでいる髪結昨夕《ゆうべ》たしかに頼んでおいたほかさまでございませんから、都合して是非までに上りますとの返事聞いてようやく安心して寝たくらいである柱時計見ると、もうにはしかないどうしたんだろうと、いかにも焦れったそうなので見兼ねた下女は、ちょっと見て参りましょう出て行った。御作さん及び腰なって障子取り出した鏡台を、立ちながら覗き込んで見たそうしてわざと開けて上下《うえした》とも奇麗揃った白い残らず露わしたすると時計ボンボン打ち出した。御作さんは、すぐ立ち上って間《あい》開けてどうしたんですよあなたもう過ぎです起きて下さらなくちゃ晩くなるじゃありませんか云った。御作さん旦那聞いて起き直ったところである。御作さん見るや否やあいよ云いながら気軽に立ち上がった
夏目漱石「人間」『永日小品』1909、冒頭)
夏目漱石「声」『永日小品』1909、冒頭)
二階手摺湯上り手拭《てぬぐい》懸けて日の目多い見下すと、頭巾被《かむ》って白い疎《まば》らに生やした下駄歯入通る古い天秤棒括りつけてへらかんかんと敲くのだがそのふと思い出した記憶ように鋭いくせにどこか抜けている爺さん筋向《すじむこう》医者傍《わき》来て例の冴え損なったかんと打つと、真白咲いたから小鳥飛び出した歯入気がつかずに青い竹垣なぞえ向《むこう》廻り込んで見えなくなった《ひとはばたき》に手摺まで飛んで来たしばらく柘榴細枝留っていたが、落ちつかぬ見えて二三身ぶり易《か》える拍子に、ふと欄干倚りかかっている自分見上げるや否やぱっと立った煙《けむ》るごとくに動いたと思ったら小鳥もう奇麗な手摺桟《さん》踏まえている
夏目漱石「心」『永日小品』1909、冒頭)
森鷗外阿部一族」1913)
数馬傍輩から、外記自分推してこのたび当らせたのだ聞くや否や即時に討死しよう決心したそれどうしても動かすこと出来ぬほど堅固な決心であった。外記ご恩報じさせると言ったということであるこのはからず聞いたのであるが実は聞くまでもない、外記薦めるにはそう言って薦めるにきまっているこう思う、数馬立ってもすわってもいられぬような気がする自分先代引立てこうむったには違いないしかし元服してからのち自分いわば大勢近習うち一人別に出色扱い受けていないには誰も浴しているご恩報じ自分に限ってしなくてはならぬというのはどういう意味言うまでもない自分殉死するはずであったのに殉死しなかったから命がけ場所やるというのである何時でも喜んで棄てるさきにしおくれた殉死代りに死のうとは思わない惜しまぬ自分なんで先代中陰果て惜しんだであろういわれないことである畢竟どれだけ入懇になった殉死するというはっきりしたない同じように勤めていた近習若侍うちに殉死沙汰ないので自分ながらえていた殉死してよいことなら自分よりもさきにするそれほどことにも見えているように思っていたそれにとうにするはず殉死せずにいた人間として極印打たれたのはかえすがえすも口惜しい自分すすぐこと出来ぬ汚れ受けたそれほど加えることあの外記でなくては出来まい。外記としてはさもあるべきことであるしかし殿様なぜそれお聴きいれになった。外記傷つけられたのは忍ぶこと出来よう殿様棄てられたのは忍ぶこと出来ない島原乗り入ろうとしたとき先代お呼び止めなされたそれ馬廻りものわざと先手加わるお止めなされたのであるこのたび当主怪我するなおっしゃるのはそれとは違う惜しいいたわれおっしゃるのであるそれなんのありがたかろう古い新たに鞭うたれるようなものであるただ一刻早く死にたい死んですすがれる汚れではない死にたい犬死でもよいから死にたい
森鷗外阿部一族」1913)