帽子(ぼうし)

03/07/2014 02:37

→「ぼうし(帽子)

用例

長いこと物蔭にはまだ殘つて居り村端れ一片《ひとつ》青んでゐない晴れたそことなく霞んで雪消《ゆきげ》泥濘《ぬかるみ》處々乾きかかつためいた薄ら温かく吹いてゐたそれ明治四十四月一日ことであつた
學年始業式なので、S尋常高等小學校代用教員、千早健《ちはやたけし》平生より少し早目に出勤した白墨《チヨオク》汚れた木綿紋附擦り切れた長目穿いてクリクリした三分刈帽子冠らず――帽子有つてゐなかつた。――亭乎《すらり》とした眞直にして玄關から上つて行く早出生徒毎朝控所彼方此方から驅けて來て恭しく迎へる中には態々叩頭《おじぎ》する許《ばつか》り其處待つてゐるあつたその殊に多かつた平生三倍四倍……遲刻勝な成績惡いさへ交つてゐた。健直ぐ其等心々溢れてゐる進級喜悦想うたそして何がなく曇つた
その解職願してゐた
石川啄木足跡」1909冒頭
高い建物当って思うごとく真直《まっすぐ》抜けられないので急に稲妻折れてから、斜《はす》舗石《しきいし》まで吹きおろして来る自分歩きながら被っていた山高帽抑えた客待御者一人いる御者台から、この有様眺めていた見えて自分帽子から離して姿勢正すや否や人指指《ひとさしゆび》立てた乗らないかと云う符徴である自分乗らなかったすると御者拳骨固めて烈しく辺《あたり》打ち出した二三離れて聞いていてもとんとんする倫敦《ロンドン》御者こうして己れわが暖めるのである自分ふり返ってちょっとこの御者見た剥げ懸った堅い帽子から、侵された厚い髪の毛食《は》み出している毛布《ケット》継ぎ合せたような粗い外套背中その張って平行なるまで怒らしつつとんとん敲いているまるで一種器械活動するようである自分再び歩き出した
夏目漱石「暖かい夢」『永日小品』1909、冒頭
夏目漱石「金」『永日小品』1909、冒頭