気がする(きがする)

27/11/2015 23:28

→「きがする(気がする)

用例

 自分この下宿出る週間ほどに、蘇格蘭《スコットランド》から帰って来たその自分主婦によって紹介された二人日本人倫敦山の手の、とある小さな偶然落ち合ってしかもまだ名乗り換した事がないので身分も、素性も、経歴分らない外国婦人藉りてどうか何分頭を下げたのは、考える今もって気がするそのこの令嬢黒い着ていた骨張って脱けたような出してさんこれさん云ったが、全く云い切らない先にまた一本相手寄せてさんこれさんと、公平双方等分引き合せた
夏目漱石「過去の匂い」『永日小品』1909、冒頭)
 数馬傍輩から、外記自分推してこのたび当らせたのだ聞くや否や即時に討死しよう決心したそれどうしても動かすこと出来ぬほど堅固な決心であった。外記ご恩報じさせると言ったということであるこのはからず聞いたのであるが実は聞くまでもない、外記薦めるにはそう言って薦めるにきまっているこう思う、数馬立ってもすわってもいられぬような気がする自分先代引立てこうむったには違いないしかし元服してからのち自分いわば大勢近習うち一人別に出色扱い受けていないには誰も浴しているご恩報じ自分に限ってしなくてはならぬというのはどういう意味言うまでもない自分殉死するはずであったのに殉死しなかったから命がけ場所やるというのである何時でも喜んで棄てるさきにしおくれた殉死代りに死のうとは思わない惜しまぬ自分なんで先代中陰果て惜しんだであろういわれないことである畢竟どれだけ入懇になった殉死するというはっきりしたない同じように勤めていた近習若侍うちに殉死沙汰ないので自分ながらえていた殉死してよいことなら自分よりもさきにするそれほどことにも見えているように思っていたそれにとうにするはず殉死せずにいた人間として極印打たれたのはかえすがえすも口惜しい自分すすぐこと出来ぬ汚れ受けたそれほど加えることあの外記でなくては出来まい。外記としてはさもあるべきことであるしかし殿様なぜそれお聴きいれになった。外記傷つけられたのは忍ぶこと出来よう殿様棄てられたのは忍ぶこと出来ない島原乗り入ろうとしたとき先代お呼び止めなされたそれ馬廻りものわざと先手加わるお止めなされたのであるこのたび当主怪我するなおっしゃるのはそれとは違う惜しいいたわれおっしゃるのであるそれなんのありがたかろう古い新たに鞭うたれるようなものであるただ一刻早く死にたい死んですすがれる汚れではない死にたい犬死でもよいから死にたい
森鷗外阿部一族」1913)
 日曜午前十時三階花子部屋ではニコライ堂鐘の音よくきこえた狭い部屋汚ながる山川に対して、花子その思いもかけぬ西洋風な音色だけ自慢できるカランコロンと鐘の音のびやかにひびきわたってくるその方角あった少しはなれて建っている裏手三階かくれてドォム見えないなる高々と中空かがやきだすドォム十字架青色ネオンむろんそこからは見られなかった日曜その時刻その目をさますことなければここ有名な教会堂あたりとは気づかぬにちがいないそれほどこの部屋ありさま白々と清潔な延ばしている聖《ひじり》橋や、重々しく四角ばってうずくまる湯島聖堂それに異国風な緑色ふくらんでいる教会丸屋根その一角ひろびろと打ち展《ひら》かれた美しい風景とは似ても似つかぬものであった
武田泰淳部屋1951冒頭
ちょうどその少しあと大宅壮一サンデー毎日』(一九六七八月二十日時評新型中間層国家日本、「世界国々見た日本姿見る人類史上ちょっとない珍しい新しいできたという気がするという注目すべき発言している
 大宅感想四十一年度国民生活白書示された数字国民一人あたり実質所得十年くらべてなっているという高度経済成長さることながら中間層みられるもの世界中どのよりもズバ抜けて広い九〇パーセント達し上層中間層との階級格差きわめて低く教育教養費娯楽レジャー費日本人生活において異常に重要な地位占めるというような現象アメリカソ連中共などとはまたちがった何か世界史上新しい実験意味するものではないかということであった農村長い後進性から脱して中間層化農家ヵ月当たり現金所得平均都市勤労者ほとんど変わりないという総評傘下組合員子弟まで大学はいっているという数字あげられているわれわれこれ加えておよそ従前主権国家概念とは矛盾するような平和憲法世界さきがけて制定内外現実主義者からその危険警告されながらもあえてこれ守り抜いて人間歴史新しい国家在り方示そうとしてきた日本人激変ぶりをも世界史的な実験一つ数えねばなるまい広島長崎被爆体験無関係ではないにせよ八月十五負けっぷりその後情勢への適応仕方にもナチス・ドイツなどとは異質な民族知恵ようなもの感じられる
石田英一郎日本文化条件可能性――ある辺境文化特質」『日本文化構造』1972)
うん、そういう人のような気がするなあ。Аха, струва ми се, че е такъв човек.
(青木栄瞳「野生のセロリ」1999(Ейме Аоки, "Дивата целина" 1999))