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一面(いちめん)

24/12/2014 00:29

→「いちめん(一面)

用例

 このあいびき先年仏蘭西《フランス》死去した露国では有名な小説家ツルゲーネフという端物《はもの》です今度徳富先生依頼訳してみました訳文我ながら不思議とソノ何んだこれでも原文きわめておもしろいです
 
九月中旬というころ一日自分さる座していたことあッた今朝から小雨降りそそぎその晴れ間にはおりおり生ま煖《あたた》かな日かげ射してまことに気まぐれな空ら合いあわあわしい白ら雲空ら一面棚引くかと思うとフトまたあちこち瞬く間雲切れしてむりに押し分けたような雲間から澄みて怜悧《さか》し気《げ》に見えるごとくに朗《ほがら》かに晴れた蒼空のぞかれた自分座して四顧してそして傾けていた木の葉頭上幽《かす》かに戦《そよ》いだその聞たばかりでも季節知られたそれ春先するおもしろそうな笑うようなさざめきでもなくゆるやかなそよぎでもなく永たらしい話し声でもなくまたおどおどしたうそさぶそうなお饒舌《しゃべ》りでもなかッたただようやく聞取れる聞取れぬほどしめやかな私語であったそよ吹く忍ぶように木末伝ッた照る曇るじめつくようす間断なく移り変ッたあるいはそこありとあるすべて一時微笑したように隈なくあかみわたッてさのみ繁くないほそぼそとした思いがけず白絹めくやさしい光沢《つや》帯び地上散り布《し》いた細かな落ち葉にわかに映じてまばゆきまでに金色《こんじき》放ち頭《かしら》かきむしッたような「パアポロトニク」(類いみごとなしかも熟《つ》えすぎた葡萄めく帯びた際限なくもつれからみして目前透かして見られた
ツルゲーネフ作、二葉亭四迷訳「あひゞ」1888、冒頭
「一面(いちめん)」用例(1909)

 岡田虞初新誌好きで中にも大鉄椎伝全文暗誦すること出来るであったそれで余程から武芸して見たいと云う願望持っていたつい機会無かったので何にも出さずにいた近年競漕し始めてから熱心になり仲間推されて選手なる進歩したのは岡田この一面意志発展したのであった
森鷗外」1913)
 天正十八真夏ひざかりであった小田原北条征伐最中秀吉二十六大軍箱根足柄相模平野海上一面包囲陣しいているその徳川陣屋家康黒田如水会談したこの二人合せたのはこの始まりいわば豊臣家滅亡一本打たれたのだが石垣山淀君遊んでいた秀吉そんなこととは知らなかった
坂口安吾二流」1947、冒頭