のであるが 連語

15/10/2015 16:15

連語のである」+接続助詞」。

のだが

用例

[発表年順]
 俳諧師松風蘿月《しょうふうあんらげつ》は今戸常磐津師匠しているをば今年盂蘭盆にもたずねずにしまったので毎日その事のみ気にしているしかし日盛り暑さにはさすがに家《うち》出かねて夕方なるのを待つ夕方なる竹垣朝顔からんだ勝手口行水つかった後《のち》そのまま真裸体《まっぱだか》晩酌傾けやっとの事離れると、黄昏焚く蚊遣《かやり》と共にいつかなり盆栽並べた往来には簾越し下駄職人鼻唄話声にぎやかに聞え出す。蘿月は女房のお滝に注意されてすぐに今戸行くつもり格子戸出るのであるがその辺涼台《すずみだい》から声をかけられるがまま腰を下すと、一杯機嫌話好に、毎晩きまって埒もなく話し込んでしまうのであった
永井荷風すみだ川」1909、冒頭
 数馬傍輩から、外記自分推してこのたび当らせたのだ聞くや否や即時に討死しよう決心したそれどうしても動かすこと出来ぬほど堅固な決心であった。外記ご恩報じさせると言ったということであるこのはからず聞いたのであるが実は聞くまでもない、外記薦めるにはそう言って薦めるにきまっているこう思う、数馬立ってもすわってもいられぬような気がする自分先代引立てこうむったには違いないしかし元服してからのち自分いわば大勢近習うち一人別に出色扱い受けていないには誰も浴しているご恩報じ自分に限ってしなくてはならぬというのはどういう意味言うまでもない自分殉死するはずであったのに殉死しなかったから命がけ場所やるというのである何時でも喜んで棄てるさきにしおくれた殉死代りに死のうとは思わない惜しまぬ自分なんで先代中陰果て惜しんだであろういわれないことである畢竟どれだけ入懇になった殉死するというはっきりしたない同じように勤めていた近習若侍うちに殉死沙汰ないので自分ながらえていた殉死してよいことなら自分よりもさきにするそれほどことにも見えているように思っていたそれにとうにするはず殉死せずにいた人間として極印打たれたのはかえすがえすも口惜しい自分すすぐこと出来ぬ汚れ受けたそれほど加えることあの外記でなくては出来まい。外記としてはさもあるべきことであるしかし殿様なぜそれお聴きいれになった。外記傷つけられたのは忍ぶこと出来よう殿様棄てられたのは忍ぶこと出来ない島原乗り入ろうとしたとき先代お呼び止めなされたそれ馬廻りものわざと先手加わるお止めなされたのであるこのたび当主怪我するなおっしゃるのはそれとは違う惜しいいたわれおっしゃるのであるそれなんのありがたかろう古い新たに鞭うたれるようなものであるただ一刻早く死にたい死んですすがれる汚れではない死にたい犬死でもよいから死にたい
森鷗外阿部一族」1913)
 最近ある哲学者反対となえたその学者ものごと真剣に考えるたちでありより年長でありながら情熱家であった熱狂的なほど芸術愛好ひたすらこの世ならぬものあこがれていたもしかしたら愛する部類ぞくする人間であった。(といっても自分誰か人間真に愛するなどとはどうしても信用できないのである
武田泰淳異形1951冒頭
[発表年未詳・筆者生年順]
讀み乍ら東北人たる作者西國土地書いてゐること感じた眞實即した立場から云ふ西國地方色西國人らしい情調乏しい云つていゝ默阿彌島千鳥松島千太明石島藏には大まかながらも東北人中國人との面目現はれてゐる徳富蘆花黒潮出て來る肥後人長州人にも何處となくその出生地面影見られる眞山新作人物には土佐つぼらしいところ長州人らしいところさう現はれてゐないやうである言葉佐訛り薩長土語殆んど用ひなかつたのは取つて付けたやうに所々用ひるよりも却つてサッパリしていゝのであるがそれにしても臺詞臭ひない田舍青武士一知半解理窟振り廻してあばれてゐるにしては臺詞調ひ過ぎてゐる中村吉藏井伊大老など幕末物西國武士無器用な締りない臺詞どことなくあの若い下級武士らしい趣きあつたやうに思ふ
正宗白鳥(1879-1962)「文藝時評真山青果坂本龍馬」」)
 昨日所謂彼岸中日でした吾々やうに田舎住むもの生活これから始まるといふです東京市中離れた此の武蔵野最中住んで居るから今日片寄せてある取り出してこの楽しむ為に根分しようとして居るところです実は久しいこと作つて居るのであるが二三年間思ふあつてわざと手入れしないで投げやりに作つて見た一体と云ふもの栽培法調べて見る或は菊作り秘伝書とか植木屋口伝とかいふものいろ/\とあつてなか/\面倒なものですこれほど面倒なものとすれば到底素人には作れないと思ふほどやかましいものですそして色々な秘訣守らなければ存分に立派な作られないといふことなつて居るところが昨年一昨年あらゆる菊作り法則無視して作つて見たたとへば早く根分けすること植ゑるには濃厚な肥料包含せしめなければならぬことなるべく大きなもの用ゐること五月七月九月摘まなければならぬこと日当りよくすること毎日一回乃至数回与へなければならぬことなつて肥料追加雑草除くことなどまだ/\いろ/\心得あるにも拘らず二三まるでやらなかつた根分やらず小さい植ゑた儘で取り替へせず摘まず勿論途絶え勝であつた云はゞあらゆる虐待薄遇とを与へたのだそれでもなるらしくそれ/″\出て綺麗な相当に優しい見せてくれたそれで考へて見れば栽培といつても絶対的に必須なものでもないらしい手入れすれば勿論よろしいしかし手入れ無くとも咲く植木屋などよく文人作りなどつけて売つて居るのはなどから見ればいつも少し出来過ぎて居てかへつて面白くない咲いた天然美しさより多く惹かれぬでもない
会津八一/會津八一(1881-1956)「根分しながら冒頭