には 連語

13/05/2015 13:52

連語
1.
格助詞」+係助詞」。]
1-1.
時・場所・対象、比較の基準など、格助詞で示されるものに、特にとりたてる、強める気持ちを表す係助詞の意味が加えられる。
それはここにはありません 今度の会には出席できないと思います 私にはわかっているんです 6時には行けると思います 空には無数の星が輝いていた あなたにはかなわない わざわざお越しいただくには及びません
1-2.
尊敬の対象となる人物を主語として表すことを避け、間接的に尊敬の意を表す。...におかれましては。
皆様にはますます御活躍のことと存じ上げます 先生にはお変わりもなくお過ごしのこととお喜び申しあげます
1-3.
[「...には...が/けれども」の形で、動詞形容詞などを重ねて。]
一応その動作や状態は認めるが、しかし、というような意味を表す。...ことは...が/けれども。
一応受ける/たには受ける/たけれども、合格の自信はまったくない その文は僕が書くには書くが、あまり期待しないでくれ 聞いてみるには聞いてみるが、多分断られると思うよ おいしいにはおいしいが、この値段はちょっと高すぎる
1-4.
[古語では、「むには」の形で推量の助動詞」を受けることが多い。]
「...時には」「...の場合には」「...たら」などの意の、軽い仮定条件を表す。
朝7時の便に乗るには3時に起きなくてはならない
1-5.
「...にとっては」という意を表す。
私には私の考え方/やり方がある
2.
接続助詞」+係助詞」。]
3.
断定
助動詞なり」の連用形」+係助詞」。「にはあらず」「にはあれど」などの形で用いて、多く否定または逆接の表現と呼応して。]
「では(ない)」「では(あるが)」などの意を表す。
4.
文語形容動詞ナリ活用)の連用形活用語尾」+係助詞」。

用例

1-1.
1-4.
かぐや姫すゑむには、れいのやうには見にくしとのたまひて
  数馬傍輩から、外記自分推してこのたび当らせたのだ聞くや否や即時に討死しよう決心したそれどうしても動かすこと出来ぬほど堅固な決心であった。外記ご恩報じさせると言ったということであるこのはからず聞いたのであるが実は聞くまでもない、外記薦めるにはそう言って薦めるにきまっているこう思う、数馬立ってもすわってもいられぬような気がする自分先代引立てこうむったには違いないしかし元服してからのち自分いわば大勢近習うち一人別に出色扱い受けていないには誰も浴しているご恩報じ自分に限ってしなくてはならぬというのはどういう意味言うまでもない自分殉死するはずであったのに殉死しなかったから命がけ場所やるというのである何時でも喜んで棄てるさきにしおくれた殉死代りに死のうとは思わない惜しまぬ自分なんで先代中陰果て惜しんだであろういわれないことである畢竟どれだけ入懇になった殉死するというはっきりしたない同じように勤めていた近習若侍うちに殉死沙汰ないので自分ながらえていた殉死してよいことなら自分よりもさきにするそれほどことにも見えているように思っていたそれにとうにするはず殉死せずにいた人間として極印打たれたのはかえすがえすも口惜しい自分すすぐこと出来ぬ汚れ受けたそれほど加えることあの外記でなくては出来まい。外記としてはさもあるべきことであるしかし殿様なぜそれお聴きいれになった。外記傷つけられたのは忍ぶこと出来よう殿様棄てられたのは忍ぶこと出来ない島原乗り入ろうとしたとき先代お呼び止めなされたそれ馬廻りものわざと先手加わるお止めなされたのであるこのたび当主怪我するなおっしゃるのはそれとは違う惜しいいたわれおっしゃるのであるそれなんのありがたかろう古い新たに鞭うたれるようなものであるただ一刻早く死にたい死んですすがれる汚れではない死にたい犬死でもよいから死にたい
森鷗外阿部一族」1913)
  
この岡田と云う学生より学年若いのだからとにかくもう卒業届いていた岡田どんなと云うこと説明するにはその手近な際立った性質から語り始めなくてはならないそれ美男と云うことである蒼いひょろひょろした美男ではない血色好くて体格がっしりしていたあんな見たこと殆ど無い強いて求めれば大分あのからなって青年時代川上眉山心安くなったあのとうとう窮境陥って悲惨最期遂げた文士川上であるあれ青年時代一寸岡田似ていた尤も当時競漕選手なっていた岡田体格では逈かに川上なんぞ優っていたのである
三木清名譽心について」『人生論ノート』1941、冒頭
  この問題考えるにはまず応仁の乱(一四六七―一四七七)あたりから始めるべきだと思うこのヨーロッパ考えるレオナルド・ダ・ヴィンチ二十歳前後青年であったエラスムスマキアヴェリミケランジェロなどようやくこの生まれたのであるルターまだ生まれていなかったポルトガル航海者ヘンリーすでに始まる没していたしかしアフリカ回航まだ発展していなかっただからヨーロッパまだそんなに進んで行っていたわけではないむしろこれから世紀進歩目ざましいのであるシャビエル日本来たのも八十であった
和辻哲郎埋もれた日本――キリシタン渡来文化前後における日本思想的情況――」1951、冒頭
1-5.
まめやかの心の友には、はるかにへだたる所のありぬべきぞわびしきや
いづれ御時にか、女御更衣あまたさぶらひたまひけるなかに、いとやむごとなきにはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり
紫式部源氏物語平安中期、冒頭)
うたがはしき御心ばへ
にはあらず
誠に、ただ人にはあらざりけるとぞ
吉田兼好徒然草」14世紀前半
  間數玄關まで入れて手狹なれども吹とほし風入りよく廣々として植込木立茂ければ住居うつてつけ見えて場處小石川植物園ちかく物靜なれば少し不便にしてにはなき貸家ありけりはりしより大凡《おほよそ》ごしにも成けれどいまだに住人《すみて》さだまらでなきいと空しくなびく淋しかりき何處までも奇麗にて見こみ好ければうちには二人三人拜見とて來るもの無きにはあらねど敷金家賃三十限り取たてにて五十といふ夫れ下町相場とて折かへして來る無かりきさるほどに此ほど朝まだき四十近かるべき年輩《としごろ》紡績浴衣《ゆかた》少しさめたる着て至極そゝくさと落つき無き差配もと來たりて見たしといふ案内して其處此處戸棚など見せてあるく其等こと片耳にも入れで四邊《あたり》靜にさわやかなる喜び今日より直にお借り申まする敷金唯今置いて參りまして引越し夕暮いかにも急速で御座ります直樣掃除かゝりたう御座りますとて何の子細なく約束とゝのひぬ職業問へばいゑ別段これといふ御座りませぬとて至極曖昧答へなり人數聞かれて何だか四五御座ります七八にも成ります始終《とほし》ごたごたして御座りませぬといふ妙な思ひし掃除すみて日暮れがた引移り來たりし相乘りかけ姿つゝみて開きたる眞直に入りて玄關おろしければともともには見えじ思ひしげなれど乘り居たる三十利きし女中一人十八には未だ思はるゝやう病美人にも手足にも血の氣といふもの少しもなく透きとほるやうに蒼白きいたましく見えて折から世話やき來て居たりし差配此人《これ》先刻《さき》そそくさともとも受とられぬ思ひぬ
樋口一葉「うつせみ」1895、冒頭