ながらえて(永らえて・長らえて・存えて)

14/10/2012 07:44

ながらえる(永らえる・長らえる・存える)

用例

殉死許し家臣十八なっとき五十久しい治乱うち身を処して人情世故《せいこ》あくまで通じて忠利は病苦にも、つくづく自分十八について考えた。生《しょう》あるもの必ず滅する老木朽ち枯れるそばで、若木茂り栄えて行く嫡子光尚の周囲いる少壮者《わかもの》どもから見れば自分任用している老成人《としより》は、もうなくてよいのである邪魔にもなるのである自分彼ら生きながらえさせて自分同じ奉公を光尚にさせたい思うが、その奉公を光尚にするものは、もう幾人も出来ていて手ぐすね引いて待っているかも知れない自分任用ものは、年来それぞれ職分尽くして来るうちに、怨みをも買ってよう少くも娼嫉《そねみ》なっているには違いないそうしてみれば強いて彼らながらえていろいうは、通達考えではないかも知れない殉死許してやっ慈悲であっかも知れないこう思って忠利は多少慰藉ような心持ちなっ
森鷗外阿部一族」1913)
数馬傍輩から、外記自分推してこのたび当らせたのだ聞くや否や即時に討死しよう決心したそれどうしても動かすこと出来ぬほど堅固な決心であった。外記ご恩報じさせると言ったということであるこのはからず聞いたのであるが実は聞くまでもない、外記薦めるにはそう言って薦めるにきまっているこう思う、数馬立ってもすわってもいられぬような気がする自分先代引立てこうむったには違いないしかし元服してからのち自分いわば大勢近習うち一人別に出色扱い受けていないには誰も浴しているご恩報じ自分に限ってしなくてはならぬというのはどういう意味言うまでもない自分殉死するはずであったのに殉死しなかったから命がけ場所やるというのである何時でも喜んで棄てるさきにしおくれた殉死代りに死のうとは思わない惜しまぬ自分なんで先代中陰果て惜しんだであろういわれないことである畢竟どれだけ入懇になった殉死するというはっきりしたない同じように勤めていた近習若侍うちに殉死沙汰ないので自分ながらえていた殉死してよいことなら自分よりもさきにするそれほどことにも見えているように思っていたそれにとうにするはず殉死せずにいた人間として極印打たれたのはかえすがえすも口惜しい自分すすぐこと出来ぬ汚れ受けたそれほど加えることあの外記でなくては出来まい。外記としてはさもあるべきことであるしかし殿様なぜそれお聴きいれになった。外記傷つけられたのは忍ぶこと出来よう殿様棄てられたのは忍ぶこと出来ない島原乗り入ろうとしたとき先代お呼び止めなされたそれ馬廻りものわざと先手加わるお止めなされたのであるこのたび当主怪我するなおっしゃるのはそれとは違う惜しいいたわれおっしゃるのであるそれなんのありがたかろう古い新たに鞭うたれるようなものであるただ一刻早く死にたい死んですすがれる汚れではない死にたい犬死でもよいから死にたい
森鷗外阿部一族」1913)