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てよい(て良い)

14/10/2014 07:54

てもいい

用例

殉死許し家臣十八なっとき五十久しい治乱うち身を処して人情世故《せいこ》あくまで通じて忠利は病苦にも、つくづく自分十八について考えた。生《しょう》あるもの必ず滅する老木朽ち枯れるそばで、若木茂り栄えて行く嫡子光尚の周囲いる少壮者《わかもの》どもから見れば自分任用している老成人《としより》は、もうなくてよいのである邪魔にもなるのである自分彼ら生きながらえさせて自分同じ奉公を光尚にさせたい思うが、その奉公を光尚にするものは、もう幾人も出来ていて手ぐすね引いて待っているかも知れない自分任用ものは、年来それぞれ職分尽くして来るうちに、怨みをも買ってよう少くも娼嫉《そねみ》なっているには違いないそうしてみれば強いて彼らながらえていろいうは、通達考えではないかも知れない殉死許してやっ慈悲であっかも知れないこう思って忠利は多少慰藉ような心持ちなっ
森鷗外阿部一族」1913)
十八殉死したときには、弥一右衛門は奉公していたのに殉死しない言って家中もの卑しんださてわずかに二三隔てて弥一右衛門は立派に切腹したが、当否措いて一旦受けた侮辱容易に消えがたく誰も弥一右衛門を褒めるものないでは弥一右衛門の遺骸霊屋《おたまや》かたわら葬ること許したのであるから跡目相続にも強いて境界立てずにおいて殉死者一同同じ扱いよかっのであるそうしたなら阿部一族面目施してこぞって忠勤励んだのであろうしかるに一段下がった扱いしたので家中ものの阿部侮蔑公《おおやけ》に認められたなった。権兵衛兄弟次第に傍輩《ほうばい》にうとんぜられて怏々として送った
森鷗外阿部一族」1913)
数馬傍輩から、外記自分推してこのたび当らせたのだ聞くや否や即時に討死しよう決心したそれどうしても動かすこと出来ぬほど堅固な決心であった。外記ご恩報じさせると言ったということであるこのはからず聞いたのであるが実は聞くまでもない、外記薦めるにはそう言って薦めるにきまっているこう思う、数馬立ってもすわってもいられぬような気がする自分先代引立てこうむったには違いないしかし元服してからのち自分いわば大勢近習うち一人別に出色扱い受けていないには誰も浴しているご恩報じ自分に限ってしなくてはならぬというのはどういう意味言うまでもない自分殉死するはずであったのに殉死しなかったから命がけ場所やるというのである何時でも喜んで棄てるさきにしおくれた殉死代りに死のうとは思わない惜しまぬ自分なんで先代中陰果て惜しんだであろういわれないことである畢竟どれだけ入懇になった殉死するというはっきりしたない同じように勤めていた近習若侍うちに殉死沙汰ないので自分ながらえていた殉死よいことなら自分よりもさきにするそれほどことにも見えているように思っていたそれにとうにするはず殉死せずにいた人間として極印打たれたのはかえすがえすも口惜しい自分すすぐこと出来ぬ汚れ受けたそれほど加えることあの外記でなくては出来まい。外記としてはさもあるべきことであるしかし殿様なぜそれお聴きいれになった。外記傷つけられたのは忍ぶこと出来よう殿様棄てられたのは忍ぶこと出来ない島原乗り入ろうとしたとき先代お呼び止めなされたそれ馬廻りものわざと先手加わるお止めなされたのであるこのたび当主怪我するなおっしゃるのはそれとは違う惜しいいたわれおっしゃるのであるそれなんのありがたかろう古い新たに鞭うたれるようなものであるただ一刻早く死にたい死んですすがれる汚れではない死にたい犬死でもよいから死にたい
森鷗外阿部一族」1913)
今日人間幸福について殆ど考へないやうである試みに近年現はれた倫理學とりわけ我が國書かれた倫理開いて見たまへ一個所幸福問題取扱つてゐない書物發見すること諸君にとつて甚だ容易であらうかやうな書物倫理信じよいのかどうかその著者倫理學者認めるべきであるのかどうかにはわからない疑ひなく確かなこと過去すべて時代においてつねに幸福倫理中心問題であつたといふことであるギリシア古典的な倫理學さうであつたストア嚴肅主義如き幸福ために節欲説いたのでありキリスト教においてアウグスティヌスパスカルなど人間どこまでも幸福求めるといふ事實根本として彼等宗教論倫理學出立したのである幸福について考へないこと今日人間特徴である現代における倫理混亂種々に論じられてゐる倫理から幸福論喪失したといふことこの混亂代表する事實である新たに幸福論設定されるまで倫理混亂救はれないであらう
三木清幸福について」『人生論ノート』1941、冒頭)