動いて(うごいて)

20/07/2015 08:15

→「うごいて(動いて)

用例

  豊三郎《とよさぶろう》がこの下宿越して来てから三日なる始めは、薄暗い夕暮に、一生懸命に荷物片づけやら書物整理やらで、忙しいごとく動いていたそれから入って帰るや否や寝てしまった明る日は、学校から戻ると、坐ってしばらく書見して見たが、急に居所《いどころ》変ったせいか全く気が乗らないしきりに鋸《のこぎり》する
夏目漱石「声」『永日小品』1909冒頭
  人生
において或る意味では習慣すべてであるといふのはつまりあらゆる生命あるものもつてゐる生命とはであるといふことができるしかるに習慣それによつて行爲出來てくるものであるもちろん習慣單に空間的なではない單に空間的な死んだものである習慣これ反して生きたでありかやうなものとして單に空間的なものでなく空間的であると同時に時間的時間的であると同時に空間的なもの即ち辯證法的なである時間的に動いてゆくもの同時に空間的に止まつてゐるといふところ生命的な出來てくる習慣機械的なものでなくてどこまでも生命的なものであるそれ作るといふ生命内的な本質的な作用屬してゐる
三木清習慣について」『人生論ノート』1941、冒頭
着物変化もまた形見少なくなっていく原因なりました日本服装では布地保存されもとほどかれたあとために作り直されて何度も何度も着ることになります一つほどかれるそれ自然に一枚布地戻され洗い張りされてまただれか着物一部なりますこういうふうして祖母着物祖母亡くなったあと生き続けて孫娘寝間着一部として残っていたりしますそこでも立たなくなるやがて寝具なり座蒲団なり雑巾なるというふう一種遍歴経ていきますその遍歴それ同時に遍歴であって素材とともに動いていく伝わっていくというふう考えられます日本アニミズム流れからいってそれ普通感じです材料伝わるということ自然に孫娘内部祖母子どもであったころさまざまな姿よびさまします
鶴見俊輔戦後日本大衆文化:1845~1980年」1984)
 住むいなくなった木造民家ほとんど改修せずに使うデイ・サーヴィス施設だったもちろんバリアフリーからはほど遠い玄関には石段あり玄関引く玄関間ある脱いでよいしょ上がるこんどそれ開けてみな集《つど》っている居間入る軽い認知症患っているその女性お菓子おしゃべり興じている老人たちにはすぐに入れず呆然と立ちつくすなんとなくいたたまれず折ってしゃがみかけるとっさどうぞいざりながら自分使っていた座布団差しだす伸びる。「おかまいなく座布団押し戻し、「言うておす遠慮せんといっしょお座りやすふたたび座布団押し戻される…。
(鷲田清一「身ぶり消失」2005)