討死(うちじに)

17/12/2012 08:03

うちじに(討(ち)死(に))

用例

敵陣飛び込んで討死をするのは立派ではあるが、軍令そむいて抜駈けをして死んではにはならない。それ犬死である同じことで、許しない殉死てはこれ犬死である
森鷗外阿部一族」1913)
数馬そばだてた。「なにこのたびお役目外記《げき》申し上げて仰せつけられたのか
そうじゃ。外記殿殿様言われた。数馬先代出格取立てなされたものじゃご恩報じあれおやりなされい言われたもっけの幸いではないか
ふんと言った数馬眉間には深い刻まれた。「よい討死するまでことじゃこう言い放って、数馬ついと起って下がった
森鷗外阿部一族」1913)
数馬傍輩から、外記自分推してこのたび当らせたのだ聞くや否や即時に討死しよう決心したそれどうしても動かすこと出来ぬほど堅固な決心であった。外記ご恩報じさせると言ったということであるこのはからず聞いたのであるが実は聞くまでもない、外記薦めるにはそう言って薦めるにきまっているこう思う、数馬立ってもすわってもいられぬような気がする自分先代引立てこうむったには違いないしかし元服してからのち自分いわば大勢近習うち一人別に出色扱い受けていないには誰も浴しているご恩報じ自分に限ってしなくてはならぬというのはどういう意味言うまでもない自分殉死するはずであったのに殉死しなかったから命がけ場所やるというのである何時でも喜んで棄てるさきにしおくれた殉死代りに死のうとは思わない惜しまぬ自分なんで先代中陰果て惜しんだであろういわれないことである畢竟どれだけ入懇になった殉死するというはっきりしたない同じように勤めていた近習若侍うちに殉死沙汰ないので自分ながらえていた殉死してよいことなら自分よりもさきにするそれほどことにも見えているように思っていたそれにとうにするはず殉死せずにいた人間として極印打たれたのはかえすがえすも口惜しい自分すすぐこと出来ぬ汚れ受けたそれほど加えることあの外記でなくては出来まい。外記としてはさもあるべきことであるしかし殿様なぜそれお聴きいれになった。外記傷つけられたのは忍ぶこと出来よう殿様棄てられたのは忍ぶこと出来ない島原乗り入ろうとしたとき先代お呼び止めなされたそれ馬廻りものわざと先手加わるお止めなされたのであるこのたび当主怪我するなおっしゃるのはそれとは違う惜しいいたわれおっしゃるのであるそれなんのありがたかろう古い新たに鞭うたれるようなものであるただ一刻早く死にたい死んですすがれる汚れではない死にたい犬死でもよいから死にたい
森鷗外阿部一族」1913)
あす討入りという四月二十日、数馬行水使って月題剃ってには忠利拝領した名香初音焚き込めた白無垢白襷白鉢巻して合印角取紙つけた帯びた正盛《まさもり》先祖島村弾正尼崎討死したとき故郷送った記念であるそれに初陣拝領した兼光差し添えた門口にはいなないている
森鷗外阿部一族」1913)
一人柄本家被官天草平九郎というもの退き口守って半弓をもって目にかかる射ていたその場で討死した
森鷗外阿部一族」1913)
阿部一族最初弥五兵衛切腹して、市太夫、五太夫、七之丞とうとう深手切れた家来多く討死した
森鷗外阿部一族」1913)
駕籠ようよう一町ばかりいったとき注進あった竹内数馬討死したことこのときわかった
森鷗外阿部一族」1913)
十太夫追放せられた竹内数馬八兵衛討手加わりながら討死場所居合わせなかったので閉門仰せつけられたまた馬廻り近習勤めていた阿部屋敷近く住まっていたので、「火の用心いたせと言って当番ゆるされ一しょ屋根上がって火の子消していたのちせっかく当番ゆるされた思召しそむいた心づいてお暇願った、光尚そりゃ臆病ではない以後も少し気をつけるよいと言ってそのまま勤めさせたこの近習光尚亡くなったとき殉死した
森鷗外阿部一族」1913)