にん(人)

05/03/2012 14:45

1.
アクセントん]
1-1.
ひと。じん。人柄。
人ヲ見テ法ヲ説ク(James Curtis Hepburn(ヘボン)「和英語林集成」1867-1886)
1-2.
多く複合語の形で
その行為をする者。その役目の者。
手形振出人 後見人
2.
接尾
助数詞
人数を数えるのに用いる。
親子三人 五人 何人いますか

→人《にん》を見て法《ほう》を説《と》け

用例

1-1.
五郎殿ぞ器量のにて
無住沙石集鎌倉後期
2.
間數玄關まで入れて手狹なれども吹とほし風入りよく廣々として植込木立茂ければ住居うつてつけ見えて場處小石川植物園ちかく物靜なれば少し不便にしてにはなき貸家ありけりはりしより大凡《おほよそ》ごしにも成けれどいまだに住人《すみて》さだまらでなきいと空しくなびく淋しかりき何處までも奇麗にて見こみ好ければうちには二人三人拜見とて來るもの無きにはあらねど敷金家賃三十限り取たてにて五十といふ夫れ下町相場とて折かへして來る無かりきさるほどに此ほど朝まだき四十近かるべき年輩《としごろ》紡績浴衣《ゆかた》少しさめたる着て至極そゝくさと落つき無き差配もと來たりて見たしといふ案内して其處此處戸棚など見せてあるく其等こと片耳にも入れで四邊《あたり》靜にさわやかなる喜び今日より直にお借り申まする敷金唯今置いて參りまして引越し夕暮いかにも急速で御座ります直樣掃除かゝりたう御座りますとて何の子細なく約束とゝのひぬ職業問へばいゑ別段これといふ御座りませぬとて至極曖昧答へなり人數聞かれて何だか四五御座ります七八にも成ります始終《とほし》ごたごたして御座りませぬといふ妙な思ひし掃除すみて日暮れがた引移り來たりし相乘りかけ姿つゝみて開きたる眞直に入りて玄關おろしければには見えじ思ひしげなれど乘り居たる三十利きし女中一人十八には未だ思はるゝやう病美人にも手足にも血の氣といふもの少しもなく透きとほるやうに蒼白きいたましく見えて折から世話やき來て居たりし差配此人《これ》先刻《さき》そそくさ受とられぬ思ひぬ
樋口一葉「うつせみ」1895、冒頭)
五六寄って火鉢囲みながらしていると、突然一人青年来た聞かず会った事もない全く未知である紹介状携えずに取次通じて面会求めるので座敷招じたら青年大勢いるへ、山鳥提げて這入って来た初対面挨拶済むと、その山鳥真中出してから届きましたからといってそれ当座贈物した
夏目漱石「山鳥」『永日小品』1909、冒頭)
南向き部屋であった明かるい背中した三十ばかり小供黒い揃えて塗板《ぬりばん》眺めていると、廊下から先生這入って来た先生低い大きい瘠せたで、から掛けて爺汚《じじむさ》く生えかかっていたそうしてそのざらざらした触《さわ》る着物薄黒く垢附《あかづ》いて見えたこの着物と、この不精に延びると、それからかつて小言云った事がない先生みなから馬鹿にされていた
夏目漱石「紀元節」『永日小品』1909、冒頭)
十八殉死したときには、弥一右衛門は奉公していたのに殉死しない言って家中もの卑しんださてわずかに二三隔てて弥一右衛門は立派に切腹したが、当否措いて一旦受けた侮辱容易に消えがたく誰も弥一右衛門を褒めるものないでは弥一右衛門の遺骸霊屋《おたまや》かたわら葬ること許したのであるから跡目相続にも強いて境界立てずにおいて殉死者一同同じ扱いしてよかったのであるそうしたなら阿部一族面目施してこぞって忠勤励んだのであろうしかるに一段下がった扱いしたので家中ものの阿部侮蔑公《おおやけ》に認められたなった。権兵衛兄弟次第に傍輩《ほうばい》にうとんぜられて怏々として送った
森鷗外阿部一族」1913)
儀式とどこおりなく済んだその間ただ一つ珍事出来したそれ阿部権兵衛殉死者遺族一人として席順によって妙解院殿位牌進んだとき焼香して退きしな《のきしな》脇差小柄抜き取って押し切って位牌供えたことであるこの詰めていたども不意出来事驚きあきれて茫然として見ていた、権兵衛何事ないように自若として五六退いたとき一人ようよう返って、「阿部殿待ちなされい呼びかけながら追いすがって押し止めた続いて二三立ちかかって、権兵衛別間連れてはいった
森鷗外阿部一族」1913)