見て(みて)

10/05/2016 16:50

→「みて(見て・視て・観て・看て・診て)

用例

御作《おさく》さん起きるが早いかまだ髪結来ないか、髪結来ないかと騒いでいる髪結昨夕《ゆうべ》たしかに頼んでおいたほかさまでございませんから、都合して是非までに上りますとの返事聞いてようやく安心して寝たくらいである柱時計見ると、もうにはしかないどうしたんだろうと、いかにも焦れったそうなので見兼ねた下女は、ちょっと見て参りましょう出て行った。御作さん及び腰なって障子取り出した鏡台を、立ちながら覗き込んで見たそうしてわざと開けて上下《うえした》とも奇麗揃った白い残らず露わしたすると時計ボンボン打ち出した。御作さんは、すぐ立ち上って間《あい》開けてどうしたんですよあなたもう過ぎです起きて下さらなくっちゃ晩くなるじゃありませんか云った。御作さん旦那聞いて起き直ったところである。御作さん見るや否やあいよ云いながら気軽に立ち上がった
夏目漱石「人間」『永日小品』1909冒頭
あっち出るでしてまあ相場ざっとぐらいもんでしょうかねそれこっち持って来ると、一円五十するんですそれでちょうど向ういた時分でしたが、から八百ばかり注文ありました旨く行く一升以上つくんですからさっそくやりました八百拵えて自分いっしょまで持って行くと、――なに相手支那で、本国送り出すんでさあすると支那出て来て宜しい云うからもう済んだのか思うと、高さ一間あろう云う大きな持ち出してそのどんどん汲み込ませるんです。――いえ何のためにもいっこう分らなかったんで何しろ大きなですから張るんだって容易なこっちゃありませんかれこれ半日かかっちまいましたそれからするかと思って見ていると、例の俵《ひょう》ほどいてどんどん放り込むんです。――実に驚いたが、支那てえ本当に食えないもん後《あと》なってようやく気がついたんです打《ぶ》ち込むたしかな尋常に沈みますが、食っただけみんな浮いちまうんですそれ支那野郎しゃくってペケって俵《ひょう》目方から引いてしまうんだからたまりません傍《そば》見ていてはらはらしました何しろ七分通り入《い》ってんだから弱りました大変なでさあ。――食ったんですか。いまいましいからみんな打遣って来ました支那ですからやっぱり知らん顔してしておおかた本国送ったでげしょう
夏目漱石「儲口」『永日小品』1909冒頭
「見て(みて)」用例(1913)
ただ見られているただ見ている見るということふだん何の意識なしにしているとおり見るということこんなに生ける権利証明でもあり残酷さ表示でもありうるとはにとって鮮やかな体験だった大声歌いせず叫びながら駆けまわりしない少年こんなふうにして自分確かめてみること学んだ
三島由紀夫金閣寺1956
加藤周一よります日本近代文化特徴みんな同じもの読んでいるということそうです一九二〇年代三〇年代四〇年代通じて会社社長その会社建物管理人等しくキング呼ばれる大衆雑誌読んでいました一九五〇年代六〇年代入る彼らまた同じように週刊朝日とか週刊ポストなど週刊誌読んでいました一九七〇年代には彼ら等しくNHKという全国放送大河放送番組テレビ見ています。[中略
  今日では九〇以上日本人中流階級属している自分たち考えていますこのこと突然に生じたことではなくこのような共通文化長いわたって続いている流れというもの背景として持っています自動車台数とか洗濯機カラーテレビ台数とかによって測られた生活水準だけでは一九六〇年代以後日本浸しているこの中流意識説明することできませんその徳川時代都市文化ありさらにそれ以前にも長期間わたってこの島国ともに住みつづけたという事実ある考えることができます
鶴見俊輔戦後日本大衆文化:1945~1980年」1984)