多数(たすう)

30/01/2016 09:42

→「たすう(多数)

用例

[発表年順]
 中国二十四歴史王朝かわるごとに学者たち集めてこしらえた正史にはみな列伝という特殊な形式部分あるそれ英雄豪傑文人学者めざましい行為一世いろどったたちまで個人に関する記録あつめたものであるこの列伝読む多数歴史的人物物語小説ように浮び出て来てその個性声音体臭まで見事に描き出されているのに感心せずにはいられない。「列伝載るほど人物いずれも何等か意味強者であり相当自己主張持ち自分自身一つ象徴一つ代表として社会押し出す人間であるだけにこれら多数人間かもし出す色模様鮮明きわまりない鮮明であるばかりでなくとかとかとか不正とか簡単な標準では片づけられない複雑な人間性いつのまにかそのいかめしい正史文章《うち》読みとられてくるのである
武田泰淳中国文学人間学1948
[発表年未詳・筆者生年順]
 所謂文壇復活したる蘇峰先生時務一家言引続いて世界変局及び大正政局史論出し更に去年より筆硯新たにして大正青年帝国前途なる一篇公にした始め新聞掲載されて居つたにはどれ丈け世間耳目惹いた知らない十一月初め一部纏まつた著書として公にさるる非常評判を以て全国読書界迎へられ瞬く間数十売り尽した国民新聞云つて居る蘇峰先生盛名国民新聞広告を以て驚くべき多数読者得たといふ固より怪しむ足らぬけれども而かも旬日ならずして売行数ふるといふのは兎にも角にも近来稀なるレコードである是れ丈け沢山読まれたといふ自身既に吾人をして問題たらしめる値打ある況んや蘇峰先生反動思想些《いささ》か擡げんとしつつある今日に於て少からず社会注目惹くべきに於てをや
吉野作造(1878-1933)「蘇峰先生大正青年帝国前途読む冒頭
 もはや一人不幸なインテリ物語瞬間時にしか我々興味惹かない世界散在して生きつづける強力な知識人興味津々たる物語それぞれ結末見通せない巨大なロマン一節として我々緊張させつつあるからである強固な知能的一人物或る呼吸停止したという事より多数彼等どのようにして生き生きつつあるその独創的な手段方法絶えず我々驚かし目ざまし活気づけてくれるいかなる突飛な自殺行為いかなる深刻ぶった自殺宣言よりもっと豊富にして怪奇な不慮我々押しつけている自殺に関する発明発見さして進展しない殺人に関する趣向日夜試験されつつあるしたがって各々選ぶ可能性与えられた人々意識するしないにかかわらず常に自己ためにとてつもない工夫こらさねばならない自殺するために国籍移すない生存するために国土から国土渡り歩く人々増加しつつあること想起しただけでも形式めざましい複雑化明らかである