も 係助詞・接続助詞・終助詞
26/03/2012 09:21
1-1.
類似《るいじ》した事物《じぶつ》を幾《いく》つか取《と》り出《だ》し、並列《へいれつ》・列挙《れっきょ》して提示《ていじ》する。「…も…も」の形《かたち》をとることが多《おお》い。
木も草も枯れた 右も左もわからない 血も涙もない男 野にも山にも春が来た
1-2.
国語も好きだ 私も知りません 君のことも頼んでおいたよ 彼女は自分のこともろくにできないくせに人に口出しばかりする
1-3.
[不定称《ふていしょう》の指示語《しじご》に付《つ》く。]
全面的否定《ぜんめんてきひてい》、または全面的肯定《ぜんめんてきこうてい》を表《あらわ》す。
何も知らないнищо не знам 誰もが知っていることнещо,което всеки знае 疑わしいことは何もない。Няма нищо съмнително. どこもいっぱいだ。Навсякъде е пълно.
[不定称《ふていしょう》の指示語《しじご》に付《つ》く。]
全面的否定《ぜんめんてきひてい》、または全面的肯定《ぜんめんてきこうてい》を表《あらわ》す。
何も知らないнищо не знам 誰もが知っていることнещо,което всеки знае 疑わしいことは何もない。Няма нищо съмнително. どこもいっぱいだ。Навсякъде е пълно.
1-4.
極端《きょくたん》な事物《じぶつ》を提示《ていじ》し、強調《きょうちょう》する。さえも。
聞いたこともない話 いつも強気の彼も今度だけは参ったようだ
1-5.
[動詞の連用形や動作性《どうさせい》名詞に付《つ》く。]
打消《うちけ》しの語と呼応《こおう》して、強《つよ》い否定《ひてい》の意《い》を表《あらわ》す。
1-5.
[動詞の連用形や動作性《どうさせい》名詞に付《つ》く。]
打消《うちけ》しの語と呼応《こおう》して、強《つよ》い否定《ひてい》の意《い》を表《あらわ》す。
思いもよらぬ話 返事/振り向きもしない 一瞥もくれない
1-6.
詠嘆《えいたん》・驚《おどろ》き・感動《かんどう》の意《い》を表《あらわ》す。
書きも書いたり、一日5000枚 こうも暑くてはやりきれない
1-7.
あることがらを示《しめ》し、その中《なか》のある一部分《いちぶぶん》に限定《げんてい》する意《い》を表《あらわ》す。といっても。のうちの。
中世も鎌倉のころ 東京も西のはずれ
1-8.
2.
[接助]
2-1.
[形容詞・形容詞型《がた》活用語の連用形に接続《せつぞく》する。]
ある動作《どうさ》・作用《さよう》や状態《じょうたい》を述《の》べる時《とき》、その量《りょう》や程度《ていど》について極端《きょくたん》な場合《ばあい》あるいは限界《げんかい》となる場合《ばあい》を想定《そうてい》するのに用《もち》いられる。とも。ても。
2-1.
[形容詞・形容詞型《がた》活用語の連用形に接続《せつぞく》する。]
ある動作《どうさ》・作用《さよう》や状態《じょうたい》を述《の》べる時《とき》、その量《りょう》や程度《ていど》について極端《きょくたん》な場合《ばあい》あるいは限界《げんかい》となる場合《ばあい》を想定《そうてい》するのに用《もち》いられる。とも。ても。
遅くも今年中には完成するだろう 見たくも見られない
2-2.
[動詞・動詞型《がた》活用語の連体形に接続《せつぞく》する。]
逆接《ぎゃくせつ》の確定条件《かくていじょうけん》を表《あらわ》す。けれども。ても。
努力するも報われなかった
2-2.
[動詞・動詞型《がた》活用語の連体形に接続《せつぞく》する。]
逆接《ぎゃくせつ》の確定条件《かくていじょうけん》を表《あらわ》す。けれども。ても。
努力するも報われなかった
3.
[終助]
[主《おも》に上代の用法《ようほう》で、その後《ご》は「かな」に代《か》わった。係助詞の終助詞的《てき》用法《ようほう》ともいう。文末《ぶんまつ》で、活用語の終止形、助詞、接尾語「く」に付《つ》く。]
[終助]
[主《おも》に上代の用法《ようほう》で、その後《ご》は「かな」に代《か》わった。係助詞の終助詞的《てき》用法《ようほう》ともいう。文末《ぶんまつ》で、活用語の終止形、助詞、接尾語「く」に付《つ》く。]
感動《かんどう》・詠嘆《えいたん》の意《い》を表《あらわ》す。体言を受《う》ける場合《ばあい》、他《た》の係助詞が上接《じょうせつ》して「かも」「やも」「ぞも」「はも」などの形《かたち》をとる。ことよ。なあ。
→かも(連語)・やも(連語)・ぞも(連語)・はも(連語)・ もこそ(連語)・もぞ(連語)・もや(連語)・もか(連語)
用例
1-1.
1-2.
1-3.
1-4.
仰の如く近來和歌は一向に振ひ不申候。正直に申し候へば萬葉以來實朝以來一向に振ひ不申候。實朝といふ人は三十にも足らでいざ是からといふ處にてあへなき最期を遂げられ誠に殘念致し候。あの人をして今十年も活かして置いたならどんなに名歌を澤山殘したかも知れ不申候。兎に角に第一流の歌人と存候。強ち人丸赤人の餘唾《よだ》を舐《ねぶ》るでも無く固より貫之定家の糟粕をしやぶるでも無く自己の本量[ママ]屹然として山嶽と高きを爭ひ日月と光を競ふ處實に畏るべく尊むべく覺えず膝を屈するの思ひ有之候。古來凡庸の人と評し來りしは必ず誤なるべく北條氏を憚りて韜晦せし人かさらずば大器晩成の人なりしかと覺え候。人を上に立つ人にて文學技藝に達したらん者は人間としては下等の地に居るが通例なれども實朝は全く例外の人に相違無之候。何故と申すに實朝の歌は只器用といふのでは無く力量あり見識あり威勢あり時流に染まず世間に媚びざる處例の物數奇連中や死に歌よみの公卿達と迚も同日には論じ難く人間として立派な見識のある人間ならでは實朝の歌の如き力ある歌は詠みいでられまじく候。眞淵は力を極めて實朝をほめた人なれども眞淵のほめ方はまだ足らぬやうに存候。眞淵は實朝の歌の妙味の半面を知りて他の半面を知らざりし故に可有之候。
(正岡子規「歌よみに与ふる書」1898、冒頭)
あっちは栗の出る所でしてね。まあ相場がざっと両に四升ぐらいのもんでしょうかね。それをこっちへ持って来ると、升に一円五十銭もするんですよ。それでね、私がちょうど向うにいた時分でしたが、浜から千八百俵ばかり注文がありました。旨く行くと一升二円以上につくんですから、さっそくやりましたよ。千八百俵拵えて、私が自分で栗といっしょに浜まで持って行くと、――なに相手は支那人で、本国へ送り出すんでさあ。すると、支那人が出て来て、宜しいと云うから、もう済んだのかと思うと、蔵の前へ高さ一間もあろうと云う大きな樽を持ち出して、水をその中へどんどん汲み込ませるんです。――いえ何のためだか私にもいっこう分らなかったんで。何しろ大きな樽ですからね、水を張るんだって容易なこっちゃありません。かれこれ半日かかっちまいました。それから何をするかと思って見ていると、例の栗をね、俵《ひょう》をほどいて、どんどん樽の中へ放り込むんですよ。――私も実に驚いたが、支那人てえ奴は本当に食えないもんだと後《あと》になって、ようやく気がついたんです。栗を水の中に打《ぶ》ち込むとね、たしかな奴は尋常に沈みますが、虫の食った奴だけはみんな浮いちまうんです。それを支那人の野郎笊でしゃくってね、ペケだって、俵《ひょう》の目方から引いてしまうんだからたまりません。私は傍《そば》で見ていてはらはらしました。何しろ七分通り虫が入《い》ってたんだから弱りました。大変な損でさあ。――虫の食ったんですか。いまいましいから、みんな打遣って来ました。支那人の事ですから、やっぱり知らん顔をして、俵にして、おおかた本国へ送ったでげしょう。
(夏目漱石
仰の如く近來和歌は一向に振ひ不申候。正直に申し候へば萬葉以來實朝以來一向に振ひ不申候。實朝といふ人は三十にも足らでいざ是からといふ處にてあへなき最期を遂げられ誠に殘念致し候。あの人をして今十年も活かして置いたならどんなに名歌を澤山殘したかも知れ不申候。兎に角に第一流の歌人と存候。強ち人丸赤人の餘唾《よだ》を舐《ねぶ》るでも無く固より貫之定家の糟粕をしやぶるでも無く自己の本量[ママ]屹然として山嶽と高きを爭ひ日月と光を競ふ處實に畏るべく尊むべく覺えず膝を屈するの思ひ有之候。古來凡庸の人と評し來りしは必ず誤なるべく北條氏を憚りて韜晦せし人かさらずば大器晩成の人なりしかと覺え候。人を上に立つ人にて文學技藝に達したらん者は人間としては下等の地に居るが通例なれども實朝は全く例外の人に相違無之候。何故と申すに實朝の歌は只器用といふのでは無く力量あり見識あり威勢あり時流に染まず世間に媚びざる處例の物數奇連中や死に歌よみの公卿達と迚も同日には論じ難く人間として立派な見識のある人間ならでは實朝の歌の如き力ある歌は詠みいでられまじく候。眞淵は力を極めて實朝をほめた人なれども眞淵のほめ方はまだ足らぬやうに存候。眞淵は實朝の歌の妙味の半面を知りて他の半面を知らざりし故に可有之候。
(正岡子規「歌よみに与ふる書」1898、冒頭)
あっちは栗の出る所でしてね。まあ相場がざっと両に四升ぐらいのもんでしょうかね。それをこっちへ持って来ると、升に一円五十銭もするんですよ。それでね、私がちょうど向うにいた時分でしたが、浜から千八百俵ばかり注文がありました。旨く行くと一升二円以上につくんですから、さっそくやりましたよ。千八百俵拵えて、私が自分で栗といっしょに浜まで持って行くと、――なに相手は支那人で、本国へ送り出すんでさあ。すると、支那人が出て来て、宜しいと云うから、もう済んだのかと思うと、蔵の前へ高さ一間もあろうと云う大きな樽を持ち出して、水をその中へどんどん汲み込ませるんです。――いえ何のためだか私にもいっこう分らなかったんで。何しろ大きな樽ですからね、水を張るんだって容易なこっちゃありません。かれこれ半日かかっちまいました。それから何をするかと思って見ていると、例の栗をね、俵《ひょう》をほどいて、どんどん樽の中へ放り込むんですよ。――私も実に驚いたが、支那人てえ奴は本当に食えないもんだと後《あと》になって、ようやく気がついたんです。栗を水の中に打《ぶ》ち込むとね、たしかな奴は尋常に沈みますが、虫の食った奴だけはみんな浮いちまうんです。それを支那人の野郎笊でしゃくってね、ペケだって、俵《ひょう》の目方から引いてしまうんだからたまりません。私は傍《そば》で見ていてはらはらしました。何しろ七分通り虫が入《い》ってたんだから弱りました。大変な損でさあ。――虫の食ったんですか。いまいましいから、みんな打遣って来ました。支那人の事ですから、やっぱり知らん顔をして、俵にして、おおかた本国へ送ったでげしょう。
(夏目漱石
「儲口」『永日小品』1909、冒頭)
1-6.
1-6.
2-2.
3.
春の野に霞たなびきうら悲しこの夕影にうぐひす鳴くも
恋せじとみたらし河にせしみそぎ神はうけずぞなりにけらしも
(「古今和歌集」913)
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