お(御・阿・於) 接頭語

03/11/2015 17:37

接頭
[「おおみ(大御)」が「おおむ(おおん)」「おん」を経て「お」と転じてできた語。中世以降の成立。]

名詞付く。][долепя се до съществителни]
1-1.
尊敬の意を表す。相手または第三者に属するものに付いて、その所属、所有 者を敬う場合と、敬うべき人に対する自己の物や行為に付いて、その対象を敬う場合とがある。изразява уважение; може да бъде долепено до съществителни, назоваващи неща, принадлежащи на или отнасящи се до събеседника или трето лице, или към съществителни назоваващи собствени вещи или действия, предназначени за/ насочени към обекта на уважение
先生のお話 お子様 あの方のおかばん お手紙/お電話を差し上げる
1-2.
丁寧に、または上品に表現しようとする気持ちを表す。използва се за придаване на любезност или изисканост на изказа
お米 お茶 お金 お風呂 お値段  おかし(御菓子) おしるこ(御汁粉) おてほん(御手本)
2.
[「阿」「於」とも書く。][「изписва се и "阿", "於"]
[女性の名前に付けて。]
尊敬、親しみの意を表す。долепено пред женски имена, изразява уважение или чувство на близост, привързаност
お花/菊/富(さん)
3.
動詞連用形名詞付く。][към съществителни или към 2-ра основа на глаголите]
3-1.
[「なさる」「になる」「遊ばす」「くださる」「いただく」「だ」などの語を伴う。][заедно с "なさる", "になる", "遊ばす", "くださる", "いただく", "だ" и пр.]
その動作主に対する尊敬の意を表す。изразява уважение към вършителя на действието
お連れになる お書きなさる お読みあそばす お話しくださる おいでなさる お世話になる お読みあそばす お書きくださる お越しいただく 社長がお呼びだ
3-2.
動詞連用形付いて][към 2-ра основа на глаголите]
和らげた軽い命令表現をつくる。目上には使わない。използва се за образуване на значително меки заповедни изрази; не се използва спрямо по-висшестоящи
用がすんだら早くお帰りпобързай да се прибереш щом си свършиш работата お黙りзамълчи, де そうおし 早くお入り。Влизай бързо.
3-3.
[「する」「いたす」「いたします」「もうしあげる」「いただく」「ねがう」などの語を伴って。][заедно с "する", "いたす", "いたします", "もうしあげる", "いただく", "ねがう" и пр.]
自分の側の動作について謙譲の意を表し、その動作の及ぶ相手を敬う。 изразява скромност по отношение на собствените действия и същевременно почтителност към този, към когото те са насочени
お連れする お書きいたします お話しもうしあげる お引き取りいただく お取り下げねがう 先生をお呼びする おかばんをお持ちいたしましょう 御注文の品をお届けに上がりました
4.
形容詞形容動詞付く。][към предикативни и полупредикативни прилагателни]
4-1.
丁寧、または上品に表現する。използва се за придаване на любезност или изисканост на изказа
お暑う/寒うございます お利口にしていなさい
4-2.
相手や第三者に対する敬意を表す。изразява уважение към събеседника или към трето лице
お美しい お元気ですか とてもおきれいでいらっしゃる さぞお寂しいことでしたでしょう
5-1.
[尊敬の表現を裏返しにして。]
からかい、皮肉、自嘲などの気持ちを表す。използва се за изразяване на подигравателност, ирония, самоирония и пр.
お高くとまっているмисли се за кой знае какво; държи се като някоя красавица お熱い仲"голяма любов" お偉方 とんだお荷物を抱えこんだもんだ
5-2.
謙譲または卑下の意を表す。
お恥ずかしいことです お恥ずかしゅうございます お粗末(さま)でした
6.
動詞連用形形容動詞語幹付いて、その下に「さま」「さん」を添えた形で。][долепя се пред 2-ра основа на глаголи или към основата на полупредикативни прилагателни, след които се добавя "さん", "さま"]
相手に対する同情やねぎらい、なぐさめの気持ちを表す。използва се за изразяване на съчувствие към събеседника, за успокоение и пр.
お疲れさん お待ち遠さま お気の毒さま ご愁傷様

[用法]
「お」「
・「お(おん・おおん)」は和語であるから「お父さん」「お早く」のように和語に付き、「ご(ぎょ)」は「御」の漢字音からできた接頭語であるから「ご父君」「ご無沙汰」のように漢語(漢字音語)に付くのが一般的である。
・話し言葉での敬語表現にも多用され、漢語意識の薄れた語では、「お+漢語(漢字音語)」も少なくない。例えば、お客、お札《さつ》、お産、お酌、お膳、お宅、お茶、お得です、どうぞお楽に、お礼、お椀、お菓子、お勘定、お行儀、お稽古 《けいこ》、お化粧、お元気、お時間、お七夜、お邪魔、お正月、お食事、お歳暮、お餞別《せんべつ》、お達者、お知恵、お銚子、お天気、お電話、お徳用、 お弁当、お帽子、お役所、お歴々など。
・「ご+和語」は数少ないが、「ごもっとも」「ごゆっくり」「ごゆるり」など多少改まった言い方で登場する。
・「―返 事」「―相伴」「―丈夫」など、「お」「ご」両方が付くものもあるが、「ご」は多少改まった表現、書き言葉的表現である。
「おビール」のような例外はある が、「お」「ご」ともに、ふつう外来語には付かない。
(参考:「大辞泉」など。)

用例

1-1.
  
間數玄關まで入れて手狹なれども吹とほし風入りよく廣々として植込木立茂ければ住居うつてつけ見えて場處小石川植物園ちかく物靜なれば少し不便にしてにはなき貸家ありけりはりしより大凡《おほよそ》ごしにも成けれどいまだに住人《すみて》さだまらでなきいと空しくなびく淋しかりき何處までも奇麗にて見こみ好ければうちには二人三人拜見とて來るもの無きにはあらねど敷金家賃三十限り取たてにて五十といふ夫れ下町相場とて折かへして來る無かりきさるほどに此ほど朝まだき四十近かるべき年輩《としごろ》紡績浴衣《ゆかた》少しさめたる着て至極そゝくさと落つき無き差配もと來たりて見たしといふ案内して其處此處戸棚など見せてあるく其等こと片耳にも入れで四邊《あたり》靜にさわやかなる喜び今日より直にお借り申まする敷金唯今置いて參りまして引越し夕暮いかにも急速で御座ります直樣掃除かゝりたう御座りますとて何の子細なく約束とゝのひぬ職業問へばいゑ別段これといふ御座りませぬとて至極曖昧答へなり人數聞かれて何だか四五御座ります七八にも成ります始終《とほし》ごたごたして御座りませぬといふ妙な思ひし掃除すみて日暮れがた引移り來たりし相乘りかけ姿つゝみて開きたる眞直に入りて玄關おろしければともともには見えじ思ひしげなれど乘り居たる三十利きし女中一人十八には未だ思はるゝやう病美人にも手足にも血の氣といふもの少しもなく透きとほるやうに蒼白きいたましく見えて折から世話やき來て居たりし差配此人《これ》先刻《さき》そそくさともとも受とられぬ思ひぬ
樋口一葉「うつせみ」1895、冒頭
「お(御・阿・於)」1-1.用例(1913)
  九月十七坐つた五つなりしめてをる
  御馳走やき松茸であつたところがある松茸には下女醤油かけるのを忘れてゐたすると直ぐ大声母さん醤油叫んだつゞいて食事しながら
アノ母さん今日○○さん○○さん初茸とり行つた。○○さん沢山取つてあたし見せびらかして喜こんでいらつしやつたのにふと当ててとり落しなすつたそれで初茸あちらへもこちらへも転がつてしまつたのです
  
さも得意に話しては食ひ/\、母さんもつと静かに云はれてしばしばしきりに動かして居た今度少し眠くなつて駄々こね始めた
和辻哲郎初旅」1972)
1-2.
  喜《き》いちゃん云ういる滑らか皮膚と、鮮か持っているが、発育好い世間子供ように冴々していないちょっと見る一面黄色い心持ちする母《おっか》さんが、あまり可愛がり過ぎて遊び出さないせいと、出入り髪結《おんなかみゆい》が評した事がある母さん束髪流行《はや》る今の世に、昔風四日四日きっと結うで、自分を喜いちゃん喜いちゃんと、いつでもちゃん付《づけ》して呼んでいるこのお母《っか》さんに、また切下《きりさげ》祖母《おばあ》さんいてその祖母さんまた喜いちゃん喜いちゃん呼んでいる。喜いちゃん稽古行く時間です。喜いちゃんむやみ出てそこいら子供遊んではいけませんなど云っている。Има едно дете на име Ки. Кожата му е гладка и очите му – блестящи и пълни с живот, ала цветът на бузките му не е така свеж (и румен), както при обикновените здраво растящи деца. Като се позагледа човек, сякаш лекичко жълтеят. Причината е, че майка й прекалено много я глези и не я пуска да си играе навън – бе изкоментирала веднъж жената, която идваше да разресва косите и оправя прическите на жените в семейството. Майката е жена, която в днешно време, когато на мода е привързването на косата в западен стил, на всеки четири дни обезателно връзва косата си в традиционен висок кок и винаги се обръща към детето си с Ки-чан, Ки-чан, прибавяйки гальовното “чан” към името му. Не стига майката, ами има и баба – бабата с типична за вдовица спусната и подравнена до врата коса - която също вика на внучето си Ки-чан, Ки-чан (, бабенце). Ки-чан, бабенце, време е да тръгваш за упражненията по кото. Ки-чан, бабенце, много, много да излизаш навън и да си играеш с децата там, не бива – казва му.
夏目漱石「柿」『永日小品』1909、冒頭、В превод на Агора София, 2011)
柳田国男さんが関西の婦人は少し敬語を亂用しすぎると述べてをられたのは至極同感であるが、その一例としてあげられた「さんさん」はむしろうれしい用ゐ様ではあるまいか。
澤瀉久孝「玄米の味」1946)
こちらいらっしゃいましこちら空いとりますから中年女一直線伸びた片側行儀よく並んだなし椅子指さした
どこ? あそこ厭だ坐りたい」中井自慢レインコオトポケット両掌入れて振った
まあこちらさんずいぶん久しぶりじゃありませんかそれじゃどこいい部屋いいでもあちら満員なの
 中年女なさそうな三人連れ敬遠した
坐らなきゃ意味ないほか行く
むり言うもんじゃないわよ
むりじゃないあっちいい
 威勢よく椅子テエブルかきわけて、中井ひょろ長い身体はこぶは、片側だけ部屋しつらえてある障子唐紙なく土間から見通し一尺四方床の間磨きあげた床柱一組ずつ具えてある
武田泰淳風媒花1952
2.
あらまあと房《ふさ》さんが驚いている。房さんは十八で、長女と同じ部屋に寝る親類の娘である。自分はまた床へ這入《はい》って寝た。
夏目漱石「永日小品」1909)
3-1.
  五助は
どうしても聴かずに五月七日いつも牽いてした連れて、追廻田畑《おいまわしたはた》の高琳《こうりんじ》へ出かけた女房戸口まで見送り出て、「お前じゃお歴々負けぬようになされい」と言った
森鷗外阿部一族」1913)
3-3.
  間數玄關まで入れて手狹なれども吹とほし風入りよく廣々として植込木立茂ければ住居うつてつけ見えて場處小石川植物園ちかく物靜なれば少し不便にしてにはなき貸家ありけりはりしより大凡《おほよそ》ごしにも成けれどいまだに住人《すみて》さだまらでなきいと空しくなびく淋しかりき何處までも奇麗にて見こみ好ければうちには二人三人拜見とて來るもの無きにはあらねど敷金家賃三十限り取たてにて五十といふ夫れ下町相場とて折かへして來る無かりきさるほどに此ほど朝まだき四十近かるべき年輩《としごろ》紡績浴衣《ゆかた》少しさめたる着て至極そゝくさと落つき無き差配もと來たりて見たしといふ案内して其處此處戸棚など見せてあるく其等こと片耳にも入れで四邊《あたり》靜にさわやかなる喜び今日より直に借り申まする敷金唯今置いて參りまして引越し夕暮いかにも急速で御座ります直樣掃除かゝりたう御座りますとて何の子細なく約束とゝのひぬ職業問へばいゑ別段これといふ御座りませぬとて至極曖昧答へなり人數聞かれて何だか四五御座ります七八にも成ります始終《とほし》ごたごたして御座りませぬといふ妙な思ひし掃除すみて日暮れがた引移り來たりし相乘りかけ姿つゝみて開きたる眞直に入りて玄關おろしければともともには見えじ思ひしげなれど乘り居たる三十利きし女中一人十八には未だ思はるゝやう病美人にも手足にも血の氣といふもの少しもなく透きとほるやうに蒼白きいたましく見えて折から世話やき來て居たりし差配此人《これ》先刻《さき》そそくさともとも受とられぬ思ひぬ
樋口一葉「うつせみ」1895、冒頭
「長十郎
お願いござりまする
森鷗外阿部一族」1913)