自己(じこ)

03/05/2016 23:54

→「じこ(自己)

用例

 の如く近來和歌一向に振ひ不申正直に申し候へば萬葉以來實朝以來一向に振ひ不申實朝といふ三十にも足らでいざ是からといふにてあへなき最期遂げられ誠に殘念致しあの人をして十年活かして置いたならどんなに名歌澤山殘したかも知れ不申兎に角に第一流歌人強ち人丸赤人餘唾《よだ》舐《ねぶ》るも無く固より貫之定家糟粕しやぶるでも無く自己本量ママ屹然として山嶽高き爭ひ日月競ふ實に畏るべく尊むべく覺えず膝を屈する思ひ有之古來凡庸評し來りし必ずなるべく北條憚りて韜晦せしさらずば大器晩成なりし覺え立つにて文學技藝達したらん人間としては下等居る通例なれども實朝全く例外相違無之何故申す實朝器用といふのでは無く力量あり見識あり威勢あり時流染まず世間媚びざる例の物數奇連中死に歌よみ公卿迚も同日には論じ難く人間として立派な見識ある人間ならでは實朝如きある詠みいでられまじく眞淵極めて實朝ほめたなれども眞淵ほめ方まだ足らぬやうに眞淵實朝妙味半面知りて半面知らざりし故に可有之
正岡子規歌よみに与ふる書」1898、冒頭
自己を愛するということは自己に侫《おも》に寛大であることではない。真に自己を愛するものは、自己に対して最も峻厳であり残酷でさえある。
種田山頭火「赤い壷(三)」1916)
「自己(じこ)」用例(1930年代)
「自己(じこ)」用例(1940年代)
 彼等自己作品一字書くとするそしてありのまま語るとする。(実際彼等大部分形式でも使用避けている)。それら今まで私小説作家比べたらとてもとは考えられぬほど膨脹変色異様なまでから離脱して行こうとする複雑な生物見えるそれら遠距離から操縦される無人ロケット機ように動くこともある死体解剖するメスようにはたらくこともあるその時々これら運動捕えるためには作家いわば絶えず極大世界から極微世界飛び移る覚悟するように風圧熱度地球自転による対象変化測定していなければならないであろう私生活記録という一見安定した苦業かくしてこれらたち活動によって内側から破られしかも外界宇宙線絶え間なく吸収することによって不安定だ未来性ある試煉ならねばならないこのような並立状態宇宙拡散した群れように眺められる場所我々立っているわけであるそのような景観一度接してしまった以上逆にそれに接する文学的個人とは全く別な以外存在許されないのだ称してもよいしたがってこの登場する小説表現形式拡大変革求めるのは伝統断続するというこましゃくれた野望からではなくきわめてささやかな日常感覚から発しているのだ確信できるのであるこれらたちにとって風俗風俗としてうけとめ書き流す小説横行まるで別世界できごとように淡い哀愁ともなって感ぜられてくるのも致しかたないことであろう
 かんけりかん思いっきりけっとばすとき気持ちいいんだ小六男の子いう中心置かれたあきかん吸い寄せられるようにして物陰から物陰へと忍び寄っていく見せたオニとの距離見切ったときもうからだ物陰からとび出しているオニ猛然と迫ってくるオニからだほとんど交錯するようにしながら一瞬早くあきかん横腹蹴るあきかん空中ゆっくり描いてくるりくるりと舞うときとまれでも叫んでしまいそうな快感押し寄せる同時にという何ものかなく抜け出していきとても身軽になったからだだけ残されるもっともいつもそんなにうまく蹴れるわけではないしばしばかんさわがしいたてながら舗道転がっていったり二、三メートル芝生ぽとんと落ちてとまったりするそれでもかん蹴った喜び変りない
 小六少年またいうかんけり隠れているときとっても幸福なんだなんだか温かい気持ちするいつまででも隠れていてもう絶対に出て来たくなくなるんだ管理塔からの監視死角隠れているとき一人であってもあるいは二、三いっしょであっても羊水包まれたような安堵感生まれるいうまでもなくこの籠り管理社会した市民社会からのアジール避難所創建身ぶりなのだ市民社会からの離脱内閉においてかいこまゆつくるようにもう一つコスモス姿現してくるそれ胎内空間にも似て根源的な相互的共同性充ちたコスモスである大人子どもそこで見失った自分なる子ども〉、〈無垢なる子ども再会するのである
 小六男の子最後もう一つつけ加えていうかんけり、「オニ違ってほか救おうとする自分救われたいけれどつかまった仲間助けなくちゃって夢中になるのが楽しいだけどオニ大変だオニ気の毒だから何回かかん蹴られたら交替するんだ実際かんけりでは隠れた誰もオニ見つかって市民社会復帰したいとは考えない運悪く捕われても勇者忽然と現れて自分救出してくれること願っている隠れた囚われた奪い返して帰って来ようとするのはつねにアジール市民社会例外的領域であるオニ気の毒であるのはオニ最初から市民社会住人であるかぎり隠れた何人見つけてもそのこと自分市民社会復帰するドラマ経験しようがないからである隠れる市民社会では囚われ人以外ではなくしたがってオニ管理者であることやめることはできない
(栗原彬「かんけり政治学1984
[発表年未詳・筆者生年順]
 もはや一人不幸なインテリ物語瞬間時にしか我々興味惹かない世界散在して生きつづける強力な知識人興味津々たる物語それぞれ結末見通せない巨大なロマン一節として我々緊張させつつあるからである強固な知能的一人物或る呼吸停止したという事より多数彼等どのようにして生き生きつつあるその独創的な手段方法絶えず我々驚かし目ざまし活気づけてくれるいかなる突飛な自殺行為いかなる深刻ぶった自殺宣言よりもっと豊富にして怪奇な不慮我々押しつけている自殺に関する発明発見さして進展しない殺人に関する趣向日夜試験されつつあるしたがって各々選ぶ可能性与えられた人々意識するしないにかかわらず常に自己ためにとてつもない工夫こらさねばならない自殺するために国籍移すない生存するために国土から国土渡り歩く人々増加しつつあること想起しただけでも形式めざましい複雑化明らかである