風(かぜ)

19/09/2015 14:32

→「かぜ(風)

用例

[発表年順]
 
このあいびき先年仏蘭西《フランス》死去した露国では有名な小説家ツルゲーネフという端物《はもの》です今度徳富先生依頼訳してみました訳文我ながら不思議とソノ何んだこれでも原文きわめておもしろいです
 
九月中旬というころ一日自分さる座していたことあッた今朝から小雨降りそそぎその晴れ間にはおりおり生ま煖《あたた》かな日かげ射してまことに気まぐれな空ら合いあわあわしい白ら雲空ら一面棚引くかと思うとフトまたあちこち瞬く間雲切れしてむりに押し分けたような雲間から澄みて怜悧《さか》し気《げ》に見えるごとくに朗《ほがら》かに晴れた蒼空のぞかれた自分座して四顧してそして傾けていた木の葉頭上幽《かす》かに戦《そよ》いだその聞たばかりでも季節知られたそれ春先するおもしろそうな笑うようなさざめきでもなくゆるやかなそよぎでもなく永たらしい話し声でもなくまたおどおどしたうそさぶそうなお饒舌《しゃべ》りでもなかッたただようやく聞取れる聞取れぬほどしめやかな私語であったそよ吹く忍ぶように木末伝ッた照る曇るじめつくようす間断なく移り変ッたあるいはそこありとあるすべて一時微笑したように隈なくあかみわたッてさのみ繁くないほそぼそとした思いがけず白絹めくやさしい光沢《つや》帯び地上散り布《し》いた細かな落ち葉にわかに映じてまばゆきまでに金色《こんじき》放ち頭《かしら》かきむしッたような「パアポロトニク」(類いみごとなしかも熟《つ》えすぎた葡萄めく帯びた際限なくもつれからみして目前透かして見られた
ツルゲーネフ作、二葉亭四迷訳「あひゞ」1888、冒頭
に揉《も》まれて上の空なる波を起す
夏目漱石草枕」1906)
「風(かぜ)」用例(1909)
「風(かぜ)」用例(1910年代)
僕はこの頃空の曇つた、
の強い日ほど恐しいものはない。あたりの風景は敵意を持つてぢりぢり僕に迫るやうな気がする。その癖前に恐しかつた犬や神鳴は何ともない。僕はをととひ(七月十八日)も二三匹の犬が吠え立てる中を歩いて行つた。しかし松風が高まり出すと、昼でも頭から蒲団をかぶるか、妻のゐる次の間へ避難してしまふ。
芥川龍之介「鵠沼雑記」1926)
「風(かぜ)」用例(1930年代)
 ――来た
[発表年未詳・筆者生年順]
何を求める
の中ゆく
種田山頭火(1882-1940))