それ(其れ・其・夫れ) 代名詞・感動詞・接続詞

13/10/2017 09:58

1.

アクセント:それヲ
1-1.
中称指示代名詞。показателно местоимение за средна близост
1-1-1.

話し手からは少し離れていて、聞き手が持っている物、或いは聞き手のそばにある物事を指す。そのもの。посочва, нещо, малко отдалечено от говорещия, притежание или в близост до събеседника; това (при теб/ вас)
ちょっとそれを見せていただけますか。Бихте ли ми показали това (при вас). あれじゃない、それだ、きみのわきにある、そう、それだ。Не него, това, дето е до теб, да, това!
1-1-2.
聞き手がいま話題にしたばかりの、或いは共通の話題として比較的両者とも に近い事物などを指す。そのこと。そのもの。посочва нещо, което събеседникът току-що е повдигнал като тема или нещо, което, като обща тема, е сравнително близко и до двамата събеседници

それはいつの話ですか。Това за кога ми го говориш/ за кога става дума. ああ、それなら私も持っています。Аа, щом е това - и аз го имам. 彼は数年前にアフリカに行って、それ以来会っていない。Той замина за Африка преди няколко години и оттогава не съм го виждал. それはそれとして...Това хубаво/ Това ясно それとこれとは話が別だ
1-1-3.
聞き手が当面している事柄を指す。そのこと。посочва това, с което сега се занимава събеседника; това (което правиш)
それが済んだら、こっちをやってくれる?/早く寝なさいよ。Като приключиш с това, били дошъл?/ Като приключиш с това веднага си лягай.
1-1-4.

親しい関係にある聞き手のそばにいる人を少し見下ろすように言う。その人。そいつ。посочва човек, който се намира близо до събеседник, с който говорещия е в близки отношения; изразът съдържа лек нюанс на високомерие
へえ、それがおまえの部下か
1-1-5.
聞き手が現にいる場所を指す。そこ。
1-1-6.
直前に出た言葉を、すぐ次に繰り返す代わりに用いる語。
あなたのいう「根拠」と私のそれとは全く似て非なるものだと言わざるを得ない
1-1-7.
直前に話題にした者。その者。
1-1-8.
不定称指示代名詞。事物の名を伏せていう時などに用いる。
1-2.
人称代名詞二人称。聞き手に対する敬意をこめて用いる。おまえ。あなた。
2.
人に注意を促すときなどに発する語。そら。ほら。
それ見なさい それ行け
3.
[「夫れ」とも書く。漢文の「夫」の訓読から。]
文頭に用いて語調を整える語。そもそも。いったい。

あれ(彼)これ(此れ・是・之・維・惟)・それかあらぬか・それでいて・それでこそ・それでなくても・それというのも・それとなく・それと(は)なしに・それにしては・それにしても・それにつけても・それにとりて・それにひきかえ・それにもかかわらず・それのみ・それも・それは・それはさておき・それはそうと(して)・それはそれとして・それはそれは・それはともあれ

用例

1-1-2.
「それ(其れ・其・夫れ)」1-1-2.用例
1-1-5.
そなたはそれにお待ちやれ
狂言今参」)
1-1-6.
 越後三条生れなり兼ねたり伯父春庵とて医師なりよりは伯父愛せられて幼きより手習学問こと皆な伯父世話なりし自ら言う異ななれど物覚えよく聞て二三知るほどなりしゆえ伯父なお入れてこのこそ穂垂という苗字知らせまたその生国としてこのをも挙るものなれとていよいよ珍重して教えられ逢えばその吹聴さるる嬉しき思いますます学問入れしゆえ神童言われ十三小学校助教なれり名誉伯父面目ためには三条町幅狭きようにてこのばかりか近郷褒め草ある県令学校巡廻あり講義聴かれて天晴慧しきかなこれまで巡廻せし学校生徒うち比べるなし校長語られたりこの洩れ聞きてさてはこの冠たるのみならず新潟県下第一俊傑なりしこの県下第一ならば全国英雄集まる東京出るとも第二流には落つまじ俄かに気強くなりて密かに我と握りて打笑みたりこの頃考えには学者政治家などという区別考えなく豪傑英雄というのみにはありしなりさりければなおさらに学問励み新たに来る教師には難問かけて閉口させにはにも伯父にも開かせぬなり十五新潟出て英学せし教師教うるところ低くして満足せず八大家文読み論語さえ講義天下経綸せんとするオメオメと持つ持つ風船乗ってしつつ廻るのと児戯に類する学ばんや東京出でばかかるあるまじ深淵あらねば潜れず東京出て我が才識研ぎ驚かすほど大功業建てる天下第一大学者ならん一詩のこして新潟学校去り在所かえりて伯父出京語りし伯父顰め、「東京にて勉学望むところなりしかしまだ早し卑近なりとて知り覚ゆるだけ方便なり二三新潟にて英学なしその上にて東京出でよ学問にはよらじ上磨きだけ東京にてせよ止められ屈して一年独学したれどはしる如き出京志し弱き手綱繋ぐべきにあらず十七なりし決して伯父乞いもし許されずは出奔せん覚悟様子それ悟りて左まで思わば出京せよ許可得たり
饗庭篁村良夜」1889、冒頭
自分親しく使っていた彼らが、惜しまものであるとは、忠利は信じているしたがって殉死苦痛せぬこと知っているこれ反してもし自分殉死許さずにおいて彼ら生きながらえてたらどうであろうか。家中一同彼ら死ぬべきとき死なものとし恩知らずとし卑怯者としともに歯《よわい》せであろうそれだけならば彼らあるいは忍んでを光尚に捧げるとき来る待つかも知れないしかしその恩知らずその卑怯者それ知らずに先代主人使っていたのだ言うものあったら、それ彼ら忍びことであろう彼らどんなに口惜しい思いするであろうこう思ってみると、忠利は「許す」と言わずにはいられないそこで病苦にも増しせつない思いながら、忠利は「許す」と言っのである
森鷗外阿部一族」1913)
1-1-7.
その時の女御、多賀幾子と申すみまそがりけり。それうせたまひて
(「伊勢物語平安時代
このには嫡子光貞のように江戸たり、また京都そのほか遠国《えんごくおんごく》にいるだちあるが、それのち知らせ受け歎い違って、熊本限りだち歎きは、わけて痛切ものであった。
森鷗外阿部一族」1913)
この霊屋《みたまや》に、翌年《よくとしよくねん》のなって、護国山妙解建立られて、江戸品川東海から沢庵和尚同門の啓室和尚来て住持なりそれ寺内の臨流隠居してから、忠利の二男出家ていた宗玄が、天岸和尚号し跡つぎなるのである
森鷗外阿部一族」1913)
1-1-8.
それの年の師走の二十一日の戌の時に
紀貫之土佐日記」935?)
1-2.
それはさこそ思すらめども、おのれは都に久しく住みて…とは思ひ侍らず
吉田兼好徒然草」14世紀前半
2.

 
たしか長春ホテルであつたと思ふそのから聞いたしかしそれそのとしてではなしにその長春事務所長してゐる出た時に、B画家らしいのんきな調子莞爾《にこにこ》と笑ひながら言つたのであつた。「、Sさんあゝいふ堅いしてゐるけれどもあれ中々隅に置けないんです
さう?」かう言つたには五十近いそれでゐて非常に若くつくつてゐる頭髪綺麗にわけた浮んだ
つい此間まで大連本社庶務課長してゐたんだが?」
庶務課長! Sさん――? それぢや、Yやつてゐる?」
さうだあそこ行つて見ました。Sあそこつい半年ほどまでゐたんですそのあと行つたんです
庶務課長から此処事務所長では左遷です?」
まアさういふわけです。S好いですけれどもそれ親切で趣味深くつてことわかるなどには非常にいゝなんですけれど――」B少し途切れて、「それ庶務課行くあの《へや》タイピストあるでせう?」
……」
あのゐるぢやないですけれども。Sさんそのタイピスト可愛がつてたうとう孕ませて了つたもんですから?」
ふむ?」いくらか眼を睜《みは》るやうにして、「あゝいふところにもさういふことあるのか? ふむ? 面白い? つまりさうするとゐるゐたやつたわけです?」
さうです
さうかな……。さういふこと沢山あるんです?」
 
かう言つたにはその大きな石造《せきぞう》建物一室――卓《テイブル》三脚並べた電話絶えず聞えて来るクツシヨン椅子置いてあるその向う後姿見せてタイピストカチカチやつてゐる一室さまはつきりと浮んだ
それで何うした? では囲つてでもあるのか
いや本社から此方《こつち》来るすつかり解決つけて来たらしい何でももう子供産んだとか言つた――」
よく早く解決出来た?」
だつて困るからなア――」B笑つて
そこに行くとあゝいふあるから何うにでもなる……」
さうかな――」
 
じつと考へ沈んだ思ひがけない人生事実といふことではなかつたけれども一種不思議な心持感じた。「ふむ!」と言つてまた振つた
それでその別品《べつぴん》?」
ちよつと白いだけですかう言つて笑つた
田山花袋(田山録弥)「アカシヤ1924冒頭
3.
それ山伏と言っぱ、役《えん》の行者のあとを継ぎ
狂言蟹山伏」)