より 格助詞

08/04/2015 09:20

格助
名詞活用語連体形副詞、一部の助詞などに付く。上代には、ほとんど同じ用法をもつ格助詞として、「ゆ」「ゆり」「よ」「より」の四語がある。これらの語源に関しては、「ゆり」「より」からその省略形として「ゆ」「よ」が生じたとする説と、「ゆ」「よ」から「ゆり」「より」が生じたとする説とがある。「より」は上代から用いられている語であるが、古来、その用法が変わらないのは1.で、中古以降、4.5.などは次第に「から」がこれに代わり、その他のものも「にて」「で」その他の語に代わったものが多い。]
1.

比較の標準・基準を表す。また、或る事物を、他との比較・対照として取り上げる意を表す。「
よりは」「よりも」「よりか」などの形をとることも多い。
僕より君のほうが金持ちだな 私のは君のより古い 富士山より高い山は日本にはない 思ったよりも立派にできた 前より腕が上がった
2.

[下に時間・距離・位置などに関する名詞が来ることが多い。]
一定の範囲を限定する意を表す。
私の家は公園より少し手前にある それは5時より後にしよう
3.

[打ち消しの語句を伴って。]
他のものを否定し、それに限定するという意を表す。「よりほか」「よりしか」などの形を用いることが多い。
断る/あきらめるより仕方がない そうするよりほかはない
4.

[書き言葉的で、話し言葉では「から」を用いるのが普通。]
動作・作用の時間的・空間的起点を表す。
神戸港より船出する 6時より開会の予定
5.
動作の行われる/移動する場所・経由地を表す。を通って。を。から。
6.
動作・作用の手段・方法を表す。によって。で。にて。
7.
原因・理由・出自を表す。がもとになって。から。のゆえに。によって。
8.
活用語連体形に付いて。]
或る動作・作用のあと、すぐ別の動作・作用の起こる意を表す。とすぐ。やいなや。と同時に。

から・ゆり・より[副詞]よりかよりはよりほか(より外・より他)よりも

用例

1.
「より」1.用例
2.
「より」2.用例
3.
もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし
(「金葉和歌集」12世紀初め
ひとりの娘よりほかにやるものがござらぬ
浮世草子井原西鶴世間胸算用」1692)
 大刀《だいとう》老人亡妻三回忌までにきっと石碑立ててやろう決心したけれども痩腕《やせうで》便《たより》に、ようやく今日《こんにち》過すよりほかには、一銭貯蓄できかねてまたなったあれ命日三月八日がなと、訴えるようなして云うはあそうでしたっけ答えたぎりである。大刀老人は、とうとう先祖伝来大切な一幅売払って工面しようきめたに、どうだろう相談する恨めしいほど無雑作にそれいいでしょう賛成してくれた内務省社寺出て四十月給貰っている女房二人子供あるに、大刀老人孝養尽くすのだから骨が折れる老人いなければ大切な懸物も、とうに融通利くもの変形したはずである
夏目漱石「懸物」『永日小品』1909、冒頭
4.
「より」4.用例
5.
古に恋ふる鳥かもゆづるはの御井《みい》の上より鳴き渡り行く
(「万葉集奈良時代
かたゐのやうなる姿なる、この車のまへよりいきけり
(「大和物語平安中期
木《こ》の間《ま》よりもりくる月の影見れば心づくしの秋はきにけり
(「古今和歌集」913)
6.
つぎねふ山背道《やましろじ》を他夫《ひとづま》の馬
より行くに己夫《おのづま》し徒歩《かち》より行けば見るごとに音《ね》のみし泣かゆ
(「
万葉集奈良時代
ただひとり徒歩《かち》よりまうでけり
吉田兼好徒然草」14世紀前半
7.
つはものどもあまた具して山へ登りけるよりなむその山をふじの山とは名づけける
(「竹取物語平安初期
百薬の長とはいへど、万《よろづ》の病は酒よりこそ起これ
吉田兼好徒然草」14世紀前半
8.
命婦かしこにまかでつきて門引き入るるより、けはひあはれなり
紫式部源氏物語平安中期
名を聞くより、やがて面影は推しはからるる心地するを
吉田兼好徒然草」14世紀前半
三里に灸《きう》すうるより、松島の月まづ心にかかりて
松尾芭蕉奥の細道」1702)