こと(事) 名詞

09/09/2015 13:28

[「こと(言)」と同源か。「もの」が何らかの作用機能状態関係などとして実現するありさまをいう。「もの」が一般時間的に不変な実体のように捉えられ、具象性を持つのに対して、「こと」は一般に生起・消滅する現象として捉えられ、思考意識対象となるものや、現象・行為・性質など抽象的なものを指す。哲学的には、「もの」が主語存在者を指すのに対して、「こと」は述語存在様態を指し、時間性の契機を含む。]
アクセント:こヲ]
1-1.
世の中に起こる、自然または人事の現象。生じたことがら。出来事。事態。事件。
ことは重大だ ことの起こりは...だ ことの真相を見極める必要がある ことの推移を見守っているところだ どんなことが起こっても驚くな
1-2.
物事の状態や経過。また、それを中心とした事情。わけ。いきさつ。
詳しいことは後で話します ことを見守る ことを分けて説明する ことと次第によってはただではおかない 
1-3.
重大事。大変な事態。重大な出来事。
ことなきを得る これが彼に知れたらことだ ここでことを起こしたら、長年の苦労が水の泡になる 一朝ことある時は
2.
[他の語句をうけて、その語句の表す行為や事態を体言化する形式名詞。]
2-1.
或る物事に関連する事柄。
今ちょうど君のことを話してたんだよ 映画のことは彼女のほうが詳しいよ 自分のことは自分でしなさい 後のことは君に任せる 彼のことだから何とか乗り切るだろう
2-2.
心情や動作の向かう対象
君のことが好きだ 彼は彼女のことが気になるらしい 先生が私のことをほめてくださった 家族のことを大切にする
2-3.
行為。仕業。仕事。用件。
今日は一ついいことをした 自分のしたことをそこで反省していなさい つまらないことをしでかしてくれたものだ
2-4.
或る言葉の指し示す対象である表す言葉内容意味
Великденとはイースターのことだ ブルガリアではイースターのことをВеликденという 私の言うことが分かりますか さっきの話に出てきた鈴木さんというのは京都の鈴木さんのことなんだよ 彼女の言うことは分からないでもないんだが 九郎判官というは源義経のことです
2-5.
[「…ということだ」「…とのことだ」などの形で。]
噂。伝聞。伝言。メッセージ。
彼はなんでも外国に行ったということだよ 佐藤さんからよろしくとのことです
2-6.
[「…ことがある/ことがない」などの形で。]
経験体験場合
中国へはまだ行ったことがないが、日本へなら何度も行った ああ、そのことはあまり深く考えたことがなかったなあ 時々変なメールが飛び込んでくることがある
2-7.
[「…ことにしている」などの形で。]
意図的な習慣にしている表す
朝は早く起きてジョギングすることにしている 相手の分からない電話には出ないことにしている
2-8.
[「…ことはない」などの形で。]
必要(性)。
何も急ぐことはない、のんびりやろう あんな奴にそこまでしてやることはないよ
2-9.
[「…ことだ」などの形で。]
話し手自身の判断に基づいた進言・忠告である表す。…ことが大事だ。
風邪気味のときは無理をしないことだ まあ、彼女によく説明して許してもらうことだな この病気をいいきっかけにして、少しのんびり生きることを心がけることだよ
2-10.
[「…ことに/とする」などの形で。]
決定/決心する意を表す
いろいろ考えましたが、やはり行く/行かないことにしました
2-11.
[「…ことに/となる」などの形で。]
結果的に/成り行きとして、そうなる表す
何も言わないということは認めたことになっちゃうんだよ 今回の事件で、東アジア情勢は新たな局面を迎えることとなったと言えるだろう
2-12.
[「…だけのことはある」などの形で。]
価値。値打ち。
プロに任せただけのことはあって、見事な出来だ 見事な出来だねえ、やっぱりプロだけのことはあるねえ 楽しかったねえ、わざわざ出かけただけのことはあったねえ
2-13.
[「…ことになっている」などの形で。]
既に規則や予定で、そう決まっている表す
公共のものを壊したら法律で弁償しなくてはならないことになっている 彼は来年留学することになっている
2-14.
[「…をこととする」などの形で。]
その行為に没頭していること、それを当面の仕事としていることを表す
定年後は晴耕雨読をこととする結構な日々を送っている
2-15.
文章の段落などの題目。
イソポが生涯のこと
3.
用言、或いはそれに助動詞の付いたものの連体形を受けて、それを体言化し、用言表す作用状態体言的な概念に変え、そこに述べられたことがらを際立たせる。
彼は100メートルを10秒台で走ることができる 私は走ることが好きなことは好きなんだけど、恐ろしく遅いんだ この際真実を率直に言ってあげることが一番いいだろう 母はまもなく帰ることと思います 彼女が仕事ができる人だということを否定する者はいない 私は侮辱を受けたことは一生忘れないタイプだ
4.
形容詞形容動詞連体形に付いて、副詞化して。]
その
状態を強調する。
うれしい/悲しい/不思議な/残念な/驚いたことに、彼女は来なかった 長いこと留守にしていた/お世話になりました うまいことやりやがって
5.
表す名詞に直接続く。
5-1.
謙譲人称やそれに準ずるに付いて。]
それに関していうを示す。古くは謙譲に限られない。
私ことこの度左記に転居致しました 愚息こと
5-2.
[通称・雅号などと本名との間に用いて。]
両者が同一人であることを示す。すなわち。つまり。
楠公《なんこう》こと楠木正成 清水次郎長こと山本長五郎 悪七兵衛こと平景清
6.
[多く「ごと」の形で用いて。]
動詞連用形名詞形容動詞語幹などに付いて。]
事柄としての行為・状態表す
考え事 悩み事 心配事 祝い事 はかりごと 色事 芸事 奇麗事
7.
[多く「ごと」の形で用いて。]
名詞に付いて。]
その真似をする遊びであることを表す。ごっこ。
ままごと 鬼ごと
8.
動詞連用形に付いて。]
前にある主語・目的語などを受けながら、全体を体言化する。
9.
食事。特に、仏教僧の夜食。
10.
行事や儀式。
11.
生命。
12.
言外に了解されている、或る事柄。例の事。
13.
[「の」を介して程度を示す副詞に付いて。]
さらに強調する意を表す。
それならなおのこと悪い/まずい/良い いっそのことやめてしまおうか/死んでしまいたい
 
こと[終助]・当て事・好《い》い事・一つ事・若しもの事・我が事《ごと》・遊び事・徒《あだ》事・他《あだ》し事・荒《あら》事・案じ事・粋《いき》事・痛事・入れ事・色事・祝い事・憂い事・絵空事・大事《おおごと》・公《おおやけ》事・鬼事・隠し事・隠れ事・賭け事・考え事・綺麗事・稽古事・景事・芸事・拵《こしら》え事・事あれかし・ことがある(事が有る)ことができる(事が出来る)ことがない(事が無い)・事が運ぶ・事ここに至る・事志《こころざし》と違《たが》う・事しもあれ・事と次第による・事とする・事ともせず・事なきを得る・事に当たる・事にする・事にする・事になる・事に触れて・事によったら・事による・事によると・事もあろうに・事も無し・事を起こす・事を欠く・事を構える・事を好む・事を分ける・酒《さか》事・杯事・定め事・戯《ざ》れ事・仕事・実《じつ》事・忍び事・修羅《しゅら》事・冗談事・勝負事・所作《しょさ》事・心配事・空事・徒《ただ》事・茶事《ちゃごと》・作り事・艶《つや》事・出来事・手事・ということ(という事)内証《ないしょ》事・慰み事・何事・習い事・濡れ事・願い事・祈《ね》ぎ事・囃子《はやし》事・僻《ひが》事・人事《ひとごと》・秘め事・節事・振り事・舞事・禍《まが》事・真似事・飯《まま》事・見事・密《みそ》か事・無駄事・物事・揉め事・約束事・俏《やつ》し事・由《ゆえ》無し事・余所《よそ》事・和事・業《わざ》事・私事・笑い事

用例

1-1.
 岡田古本屋覗く云えば文学趣味あるからであったしかしまだ新しい小説脚本出ていぬ抒情詩では子規俳句鉄幹生れぬであったから誰でも唐紙摺った花月新誌白紙摺った桂林一枝ような雑誌読んで槐南、夢香(むこう)なんぞ香奩体最も利いたと思うであった花月新誌愛読者であったから記憶している西洋小説翻訳と云うものあの雑誌始て出したのであるなんでも西洋或る大学学生帰省する途中殺されるそれ談話体訳した神田孝平さんであったと思うそれ西洋小説と云うもの読んだであったようだそう云う時代から岡田文学趣味漢学者新しい世間出来事詩文書いた面白がって読む過ぎなかったのである
坂口安吾二流」1947、冒頭
2-1.
2-2.
「こと(事)」2-2.用例
2-3.
「こと(事)」2-3.用例
2-4.
「こと(事)」2-4.用例
2-5.
2-11.
2-14.
銭積もりて尽きざるときは、宴飲声色を
こととせず
吉田兼好徒然草」14世紀前半
3.

「こと(事)」3.用例
4.
 昨日所謂彼岸中日でした吾々やうに田舎住むもの生活これから始まるといふです東京市中離れた此の武蔵野最中住んで居るから今日片寄せてある取り出してこの楽しむ為に根分しようとして居るところです実は久しいこと作つて居るのであるが二三年間思ふあつてわざと手入れしないで投げやりに作つて見た一体と云ふもの栽培法調べて見る或は菊作り秘伝書とか植木屋口伝とかいふものいろ/\とあつてなか/\面倒なものですこれほど面倒なものとすれば到底素人には作れないと思ふほどやかましいものですそして色々な秘訣守らなければ存分に立派な作られないといふことなつて居るところが昨年一昨年あらゆる菊作り法則無視して作つて見たたとへば早く根分けすること植ゑるには濃厚な肥料包含せしめなければならぬことなるべく大きなもの用ゐること五月七月九月摘まなければならぬこと日当りよくすること毎日一回乃至数回与へなければならぬことなつて肥料追加雑草除くことなどまだ/\いろ/\心得あるにも拘らず二三まるでやらなかつた根分やらず小さい植ゑた儘で取り替へせず摘まず勿論途絶え勝であつた云はゞあらゆる虐待薄遇とを与へたのだそれでもなるらしくそれ/″\出て綺麗な相当に優しい見せてくれたそれで考へて見れば栽培といつても絶対的に必須なものでもないらしい手入れすれば勿論よろしいしかし手入れ無くとも咲く植木屋などよく文人作りなどつけて売つて居るのはなどから見ればいつも少し出来過ぎて居てかへつて面白くない咲いた天然美しさより多く惹かれぬでもない
会津八一/會津八一(1881-1956)「根分しながら冒頭
さん?」
(宮部みゆき「東京下町殺人暮色」1994、冒頭
8.
呉人が西施をくせ物と云ひ
ことは無益也
(「
中華若木詩抄」17世紀中期
9.

ある人
ことをして贈りたりけるに
(「古今著聞集」1254)
10.

夜いたう更けてなむ、
こと果てける
11.
いみじき
ことの閉ぢめを見つるに12.この僧、彼の女に合宿して、ことども企てけるが
(「
古今著聞集」1254)