「に」3-3.用例

19/06/2017 18:44

→「3-3.

用例

よろしうよみたりと思ふ歌を人のもとにやりたる、返しせぬ
清少納言枕草子平安中期
しばしかなでて後、抜かんとする、大方抜かれず
吉田兼好徒然草」14世紀前半
 
木理《もくめ》美しき槻胴《けやきどう》にはわざと赤樫用ひたる岩畳作り長火鉢対ひて話し敵なく一人少し淋しさうに坐り居る三十前後やうに立派何日《いつ》掃ひし剃つたる痕《あと》青々と、見る覚むべき雨後とどめて翠《みどり》匂ひひトしほ床しく鼻筋つんと通り目尻キリリと上り洗ひ髪ぐるぐると酷く丸めて引裂紙《ひっさきがみ》あしらひ一本簪ぐいと留め刺した色気なしつくれど憎いほど烏黒《まっくろ》にてある髪の毛一ト《ふさ》後《おく》れ乱れて浅黒いながら渋気抜けたるかかれる趣きは、年増嫌ひでも褒めずにはおかれまじき風体わがものならば着せてやりたい好みある好色漢《しれもの》随分頼まれせぬ詮議では為《す》べきさりとは外見《みえ》捨てて堅義自慢した装《つく》り方選択《えらみ》こそ野暮ならね高が二子綿入れ繻子襟かけた着て何所《どこ》紅《べに》くさいところなく引つ掛けたねんねこばかり往時《むかし》何なりしやら疎《あら》い糸織なれどとて幾度か潜つて来たなるべし。(幸田露伴五重塔」1891-92、冒頭
日中の照りに乾いて、きょうは道が好かった、小庭の苔はまだ濡れている
森鷗外「蛇」1911)
 敵陣飛び込んで討死をするのは立派ではあるが、軍令そむいて抜駈けをして死んではにはならない。それ犬死である同じことで、許しない殉死てはこれ犬死である
森鷗外阿部一族」1913)
森鷗外阿部一族」1913)
 
竹内数馬徳右衛門いるように高見権右衛門一人小姓連れている阿部一族ことあった二三この小姓非番部屋昼寝していたそこへ相役一人供先から帰って真裸なって手桶提げて井戸汲み行きかけたふとこの小姓寝ている見て、「おれから帰った汲んでくれずに寝ておるかい言いざま蹴った小姓跳ね起きた
なるほどさめておったら汲んでやろうじゃが足蹴するということあるこのままには済まんこう言って抜打ち相役大袈裟切った
森鷗外阿部一族」1913)
 末造も再び譲歩しようとはしない。こっちから媾和を持ち出した
、彼が応ぜぬなら、それまでの事だと思って、わざと平気で烟草を呑んでいる。
森鷗外」1915)