ろく(六・陸・6)

10/12/2015 15:05

[「陸」は大字。金銭証書などに用いる。]
アクセント:ろヲ]
1.
数の名。
5より一つ多い数。5の次、7の前の数。む。むつ。むっつ。りく。шест
2.

6番目。第6。
5番目の次の順序。шести подред

用例

1.
  
その頃神田明神降りた曲角鉤なり縁台出して古本曝しているあったそこで或る唐本金瓶梅見附けて亭主問うと云った負けてくれと云うと、「先刻岡田さんなら買う仰ゃいましたことわり申したのですと云う偶然工面好かったので言値買った二三立ってから岡田逢う向うからこう云い出した
ひどい切角見附けて置いた金瓶梅買ってしまったじゃないか
そうそう附けて折り合わなかった本屋云っていた欲しいなら譲って上げよう
なにから読んだ貸して貰えば好い
喜んで承諾したこんな今まで長い壁隣住まいながら交際せずにいた岡田とは往ったり来たりするようになったのである
森鷗外」1913)
 八月五日 快晴
 午前五時千二百トンA本島三根《みつね》港外碇泊した
いいなぎだったこんなこと珍しい
 住人らしい婦人夜っぴて熟睡したあげく何度もそう呟いた彼女赤ん坊気味わるいほど啼き声立てなかった大島からさき、Aかなりはげしく動揺黒い舷側打ちつづけた定員二等船室だけ頭上戸棚から引きだした救命袋にして配給された毛布包み船旅快適だった吸いついた大海うねりまま上下するのもにはならない汽船旅客自分運ぶ運命感じさせるものだ鉄板組みあげられた船体エンジン能率風圧潮流さまざまな物理的な摩擦妥協によって移動していくからしかも乗客全部善悪貴賎なく不安定さ同じ状態運ばれていく巨大なもの委せた気楽さそれから逃れられないあきらめ彼ら互いに親しみ合わせる
武田泰淳流人島にて1953冒頭
  世紀以来仏教入ってきますところがはじめから大乗仏教非常に高度なもの入ってくる唯識などという仏教なかでも最高に論理的でむずかしいものなどただちに入ってくるそれやがて空海などによって土着的なものつなげられる最近研究では空海入唐私度僧山林修行僧として山野うろうろしていたらしく土着的なもの深く根ざした信仰形態かかわりもっていたのではないかいわれていますこのあたりから徐々に土着自然性にじみ出てきて鎌倉期親鸞まで下る自然法爾というような生地丸出しようなところにまでくる
  もう一つ儒教です儒教ちょうど徳川幕府発足した一六〇〇ごろから仏教とって代わる支配的な知的形態としての地位確立しはじめるのですがこれ仏教唯識法相宗中観三論宗ようなややこしいものいきなり受け入れたようにはじめから朱子学という非常に高度な論理形態忠実に受け入れているそれ伊藤仁斎において徹底的な朱子学批判通してかなりシンプルになりある意味仁斎学風継承した荻生徂徠古文辞学なるその徂徠古文辞学方法影響もと本居宣長国学説いたころにはもう自然帰っているわけです同じころ安藤昌益自然帰れという思想生まれるそこへ収束してゆくのです高度なもの入っても鎌倉時代江戸時代という江上先生いわれる内面化段階日本人落着きいいところ収斂してきてそこで一種独創めいたものできる
(上山春平(
石田英一郎・上山春平・江上波夫・増田義郎「座談会日本人好奇心エネルギー源泉」『日本文化構造』1972)
2.
 子どもたち集まって何かして遊ぼうとするとき隠れん坊しないで複数オニオニすることには見過ごし難い意味ありそうだ隠れん坊藤田省三或る喪失経験――隠れん坊精神史という論文(『精神史的考察平凡社一九八二所収述べたように人生凝縮して型取りした身体ゲームであるオニひとり荒野彷徨隠れるどこか籠るという対照的な構図あるけれどもいずれも同じ社会から引き離される経験でありオニ隠れていた見つけることによって仲間いる社会復帰隠れたオニ見つけてもらうことによって擬似的な世界から蘇生して社会戻ることができる隠れん坊子ども遊び世界から消えること子どもたち相互役割演じ遊ぶことによって自他再生させつつ社会復帰する演習経験失うということであるたしかに複数オニオニおこなわれているけれどもそれらもはや普通隠れん坊退屈さ救うためにアクセントつけたといったていどことではない
 小学男の子から聞いた翻案すれば、「複数オニ演習主題裏切りであるオニつぶってかぞえている子どもたちいっせいに逃げるそれぞれ隠れ場所工夫しても同じ方向逃げれば近くいる同士互いにどの辺隠れている知っているそのとき一方見つかれば即座にオニというスパイ変じて寸秒仲間だった隠れ家あばくことになる近く隠れたとの仲間意識裏切り裏切られる恒常的な不安によって脅かされている連帯裏切りとの相互変換半所属不安産み出しその不安抑えこもうとして裏切り者残党狩りいっそう過酷なものなるオニ聖なる媒介者であることやめて秘密警察転じ隠れる一人ひとり癒し難い離隔深めつつ仲間スパイ抱えた逃亡者集団化す
(栗原彬「かんけり政治学1984