けれども 接続詞・接続助詞・終助詞

13/10/2017 21:01

[くだけた言い方では、「けれど」「けど」「けども」などの形が使われる。]
1.

2.
接続助詞「けれども」から。]
前に述べた事柄と相反する内容を導く。だが。しかし。
彼女は口数は少ない。けれどもいろいろなことをよく考えている。 彼は確かによく勉強する。けれども何か根本的なものが欠けている。 日本もいい国だ。けれどもブルガリアも負けないぐらいいいところだ。 けれどもね、それは仮定の話でしょ
2.
接助
活用語終止形に付く。中世末、形容詞活用已然形語尾接続助詞ども」が付いてできたもの。近世前期になると、くだけた感じを伴う「けれど」「けど」が生じ、後期には、「けども」が成立した。]
2-1.

確定の逆接条件を表し、逆の/矛盾する内容の事柄を対比的に、または関係のうすい事柄を結びつける。
彼女は口数は少ないけれども、いろいろなことをよく考えている。 彼は確かによく勉強するけれども、何か根本的なものが欠けている。 日本もいい国だけれども、ブルガリアも負けないぐらいいいところだ。 登りは苦しいけれども、山頂からの眺めは実にすばらしい 少し翳があるけれども、美しい人 言うことは一人前だけだけれども、やることはまるでなってない
2-2.
或る事実を前置きとして述べ、本題に結びつける。
つまらないものですけれどもどうぞ。 失礼に聞こえるかもしれませんけれども、それはおかしいと思います 君のことを思って言うんだけれども、あれはやめたほうがいい
2-3.
二つの事柄を単に結びつける。
メールが来てたようだけれども、返事しなくていいの? 日本の象徴というけれども、富士も桜も実に美しい あなたもすてきだけれども、彼もすてき 時間もないけれども金もない
3.
終助
活用語終止形に付く。]
3-1.

言い切りを避け、婉曲に表現する。
あさって行けるんですけれども 母は今出かけているんですけれども あのう、そろそろお時間ですけれども
3-2.
事実とは反対の事柄を願う。また、不安に思ったり、半ばあきらめたりしながらも、事柄の実現などを願う気持ちを表す。また、軽蔑し、軽んじる気持ちを添える。
もうすこし背が高いといいのだけれども このままお天気が続くといいんですけれども ちょっとでも晴れてくれるとありがたいんだけれども どうせろくな話ではないだろうけれども、一応聞いてやろう

用例

1.
「けれども」1.用例
2-1.
[発表年順]

 
たしか長春ホテルであつたと思ふそのから聞いたしかしそれそのとしてではなしにその長春事務所長してゐる出た時に、B画家らしいのんきな調子莞爾《にこにこ》と笑ひながら言つたのであつた。「、Sさんあゝいふ堅いしてゐるけれどもあれ中々隅に置けないんです
さう?」かう言つたには五十近いそれでゐて非常に若くつくつてゐる頭髪綺麗にわけた浮んだ
つい此間まで大連本社庶務課長してゐたんだが?」
庶務課長! Sさん――? それぢや、Yやつてゐる?」
さうだあそこ行つて見ました。Sあそこつい半年ほどまでゐたんですそのあと行つたんです
庶務課長から此処事務所長では左遷です?」
まアさういふわけです。S好いですけれどもそれ親切で趣味深くつてことわかるなどには非常にいゝなんですけれど――」B少し途切れて、「それ庶務課行くあの《へや》タイピストあるでせう?」
……」
あのゐるぢやないですけれども。Sさんそのタイピスト可愛がつてたうとう孕ませて了つたもんですから?」
ふむ?」いくらか眼を睜《みは》るやうにして、「あゝいふところにもさういふことあるのか? ふむ? 面白い? つまりさうするとゐるゐたやつたわけです?」
さうです
さうかな……。さういふこと沢山あるんです?」
 
かう言つたにはその大きな石造《せきぞう》建物一室――卓《テイブル》三脚並べた電話絶えず聞えて来るクツシヨン椅子置いてあるその向う後姿見せてタイピストカチカチやつてゐる一室さまはつきりと浮んだ
それで何うした? では囲つてでもあるのか
いや本社から此方《こつち》来るすつかり解決つけて来たらしい何でももう子供産んだとか言つた――」
よく早く解決出来た?」
だつて困るからなア――」B笑つて
そこに行くとあゝいふあるから何うにでもなる……」
さうかな――」
 
じつと考へ沈んだ思ひがけない人生事実といふことではなかつたけれども一種不思議な心持感じた。「ふむ!」と言つてまた振つた
それでその別品《べつぴん》?」
ちよつと白いだけですかう言つて笑つた
田山花袋(田山録弥)「アカシヤ1924冒頭
序論
  わが国には古来神道だの儒教だの仏教哲学行なわれておったのであるけれども西洋文明輸入とともに別系統哲学思想新たに明治年間起って来たすなわちそれ西洋哲学思想刺戟せられてわが国において種々なる哲学的思索促してきたのであるその結果伝統的東洋思想とはおのずから異った哲学思想潮流発生するようになってきた次第である西洋思想真先に輸入されたのは宗教思想すなわちクリスト教であったそれに次いで医学化学物理学植物学兵学など輸入されたのであったけれども明治初年至って哲学論理学心理学など先覚者はじめて注意するところとなって思想界清新気運喚起してきたのである
井上哲次郎明治哲学界回顧」1932、冒頭
  
わたくし安萬侶《やすまろ》申しあげます
  
宇宙はじめ當つてはすべてはじめまずできましたが、その氣性まだ十分でございませんでしたので名まえなく動きなく誰もその知るものございませんそれからしてとがはじめてなつて、アメノミナカヌシの、タカミムスビの、カムムスビのが、すべて作り出す最初なりそこで男女兩性はつきりして、イザナギの、イザナミのが、萬物生み出すなりましたそこでイザナギのは、地下世界訪れまたこの歸つて禊《みそぎ》してとが洗う現われ海水浮き沈みして洗うに、さまざま出ましたそれ故に最古時代は、くらくはるかあちらですけれども前々からのによつて國土生み成したこと知り物しりによつて生み人間成り立たせたことわかります
武田祐吉訳「(現代語譯)古事記」1956、冒頭
[発表年未詳・筆者生年順]
  
所謂文壇復活したる蘇峰先生時務一家言引続いて世界変局及び大正政局史論出し更に去年より筆硯新たにして大正青年帝国前途なる一篇公にした始め新聞掲載されて居つたにはどれ丈け世間耳目惹いた知らない十一月初め一部纏まつた著書として公にさるる非常評判を以て全国読書界迎へられ瞬く間数十売り尽した国民新聞云つて居る蘇峰先生盛名国民新聞広告を以て驚くべき多数読者得たといふ固より怪しむ足らぬけれども而かも旬日ならずして売行数ふるといふのは兎にも角にも近来稀なるレコードである是れ丈け沢山読まれたといふ自身既に吾人をして問題たらしめる値打ある況んや蘇峰先生反動思想些《いささ》か擡げんとしつつある今日に於て少からず社会注目惹くべきに於てをや
吉野作造(1878-1933)「蘇峰先生大正青年帝国前途読む冒頭
2-3.
  わが国には古来神道だの儒教だの仏教哲学行なわれておったのであるけれども西洋文明輸入とともに別系統哲学思想新たに明治年間起って来たすなわちそれ西洋哲学思想刺戟せられてわが国において種々なる哲学的思索促してきたのであるその結果伝統的東洋思想とはおのずから異った哲学思想潮流発生するようになってきた次第である西洋思想真先に輸入されたのは宗教思想すなわちクリスト教であったそれに次いで医学化学物理学植物学兵学など輸入されたのであったけれども明治初年至って哲学論理学心理学など先覚者はじめて注意するところとなって思想界清新気運喚起してきたのである