格助詞・並列助詞・接続助詞・係助詞

14/07/2015 15:14

格助詞及び並立助詞の「と」は、「梯立ての倉梯山は嶮しけど妹登れば嶮しくもあらず」(「古事記」712)「うちなびく春の柳我がやどの梅の花をいかにか別かむ」(「万葉集奈良時代)などのように、上代からの接続助詞の「と」は中古以降の語。中古には、「嵐のみ吹くめるやどに花すすき穂に出でたりかひやなからむ」藤原道綱母蜻蛉日記/かげろふ日記」10世紀後半などのように、仮定の逆接条件を表した中世後期から近世へかけて、「私の留守になる、酒ばかり飲うで」(狂言「吃」)「てんがうも事による、重ねてしやるかか様にいふぞや」(歌舞伎近松門左衛門傾城阿波の鳴門」1695)などのように、順接条件を表すものが見られるようになり、現代に及ぶ。]
1.
格助
名詞名詞的な語、副詞などに付く。]
1-1.
動作・
作用の相手・共同者、または動作・関係の対象を表す。
友人と話す/けんかするговоря/карам се с приятел 友人と起業する 子どもと公園を散歩するразхождам се в парка с децата 病気と闘うборя се с болест
1-2.
比較の基準を表す。
これはそれと同じだ/違う 考え方が昔/君とは違う。Начинът ми на мислене е различен от този в миналото/от твоя. 私のは古すぎてあなたのとは比べものになりません。Моето е прекалено старо и не може да се сравнява с твоето.
1-3.
」と共通する点があるが、「と」はその結果を表すのに重点がある。
動作・作用などの帰結・結果を表す。
無罪となった/決定した 次年度より社名を○○と改める その時以来彼は復讐の鬼と化した
1-4.
動作・作用・状態の内容表す
家を出ようすると雨が降ってきた 交渉は難航するものと考えられ(てい)る/思われ(てい)る/見られ(てい)る/思える 師と仰ぐ人が先日亡くなり、力を落としている
1-5.
動作・状態の様子を表す。
ゆっくり/そろそろ/さっさ/のろのろ/だらだら/のんびり/さくさく/せかせか/きびきび/ぞろぞろと歩く 溢れ出した水が道路を川と流れる 山と積みあがったごみ いつもは淑女然とすましている彼女もアルコールが入ると本性が出てしまう 意外といい出来だった
1-6.
[数量を表すに付き、多く打消しの表現を伴って。]
少ない量をあげて、その範囲以上には出ないという量的な限度を
表す。までも。
材料費は1,000円とかからないだろう この調子では三日ともつまい
1-7.
心理的な状態を指し示す。「と思って」の意。
失敗してはいけないと慎重にやる 早めに着きたいと先を急ぐ
1-8.
[文や句をそのまま受けて。]
動作・
作用・状態の内容表す。引用の「と」。
彼女も来ると言ってたよ 疑わしきは罰せずという結論に達した 「性は善なり」と孟子にもあるよ
1-9.
[多く「とする」「として」の形で。]
状態を形容する。
はっと/どきっと/どきりと/ぎょっと/する
1-10.
[「…と…」の形で、同一の動詞形容詞を重ねた間に用いて。]
意味
を強める。現代語では限られた言い方としてしか用いられない。
ありとあらゆる手を使う 生きとし生けるものはすべて尊い
1-11.
「…となく…となく」の形で慣用的に用いる。
病気の犬を夜となく昼となく面倒を見る
2.
並助
[並立する
ごとに「と」を用いるのが本来の用法であるが、現代語ではいちばんあとにくる「と」を省略するのが普通となっている。]
体言またはそれに準ずるに付いて、二つまたはそれ以上のものを列挙するのに用いる。
あなたと私(と)はもう運命共同体だ 彼は私とあなた(と)の関係に気づいたらしい
3.
接助
活用語終止形に接続する。
3-1.
或る動作・作用がきっかけとなったりして、二つの動作・作用がほとんど同時に、または継起的に起こる表す。と同時に。とすぐ。
家を出ようとする雨が降ってきた。Тъкмо, когато щях да излизам от вкъщи, заваля дъжд. 外に出る、隣家の梅の香が漂ってきた 布団の中で目をつぶる今日のことがいろいろと思い出された 汗をかいたままにしておく風邪をひきやすい 風が吹く桶屋が儲かる その名前を聞く若い頃の記憶が一気に蘇ってくる 私は起きるすぐパソコンを立ち上げる 彼は一言「じゃ」と言う、こちらの目も見ずにすたすたと行ってしまった 夏になるこの海はとてもにぎやかになる
3-2.
中世以降の用法。]
前後の
関係が、いわば順当に起こりうる、順接の仮定条件を表す。もし…すると。
先生に見つかるとまずいからあっちでやろう これはこういう風にするとやりやすい 山のほうへ行くともっと涼しいですよ
3-3.
次の発言の前置きを表す。また、次の話題の前提となる表す
正直に言うと、もうだめかもしれない そのやり方だと、よりコストがかかるだろう 気象庁の長期予報によると、今年の夏は冷夏の心配があるということです
3-4.
中古から使われていた3-4-2.は、現代語では3-4-1.のように特殊な慣用的用法として残っているだけで、ごく限られた言い方にしか用いられない。
逆接の仮定条件を表す。
3-4-1.
意志・推量の助動詞「う・よう」「まい」などのに付く。→「2-3.
たとえ…であっても。ても。
彼に会おうと会うまいと、私の自由でしょ。Дали ще се видя с него или не,си е моя работа, нали. あなたに何を言われようともう気にしないわ そうだ、行こうと行くまいと、君の勝手だ、僕は止めない でも、それでどうなろうと僕の知ったことではないからね
3-4-2.
動詞形容動詞活用語終止形、および形容詞活用語連用形に付く。]
たとえ…であっても。ても。
4.
係助
上代東国方言
係助詞「ぞ」に同じ。
5.
5-1.
打消し助動詞」のあとに付く。語源を「外《と》」或いは「処《と》」に関係づける説などがあるが、未詳。]
…前。…ないうち。
5-2.
…時。

と[接続詞]

用例

1-1.
しぐれ降る暁月夜紐解かず恋ふらむ君居《を》らましものを
(「万葉集奈良時代
三木清名譽心について」『人生論ノート』1941、冒頭
1-2.
思ふこといはでぞただにやみぬべき我ひとしき人しなければ
(「伊勢物語平安時代
1-3.
年をへて花の鏡なる水は散りかかるをやくもるといふらむ
(「古今和歌集」913)
1-4.
 間數玄關まで入れて手狹なれども吹とほし風入りよく廣々として植込木立茂ければ住居うつてつけ見えて場處小石川植物園ちかく物靜なれば少し不便にしてにはなき貸家ありけりはりしより大凡《おほよそ》ごしにも成けれどいまだに住人《すみて》さだまらでなきいと空しくなびく淋しかりき何處までも奇麗にて見こみ好ければうちには二人三人拜見とて來るもの無きにはあらねど敷金家賃三十限り取たてにて五十といふ夫れ下町相場とて折かへして來る無かりきさるほどに此ほど朝まだき四十近かるべき年輩《としごろ》紡績浴衣《ゆかた》少しさめたる着て至極そゝくさと落つき無き差配もと來たりて見たしといふ案内して其處此處戸棚など見せてあるく其等こと片耳にも入れで四邊《あたり》靜にさわやかなる喜び今日より直にお借り申まする敷金唯今置いて參りまして引越し夕暮いかにも急速で御座ります直樣掃除かゝりたう御座りますとて何の子細なく約束とゝのひぬ職業問へばいゑ別段これといふ御座りませぬとて至極曖昧答へなり人數聞かれて何だか四五御座ります七八にも成ります始終《とほし》ごたごたして御座りませぬといふ妙な思ひし掃除すみて日暮れがた引移り來たりし相乘りかけ姿つゝみて開きたる眞直に入りて玄關おろしければには見えじ思ひしげなれど乘り居たる三十利きし女中一人十八には未だ思はるゝやう病美人にも手足にも血の氣いふもの少しもなく透きとほるやうに蒼白きいたましく見えて折から世話やき來て居たりし差配此人《これ》先刻《さき》そそくさ受とられぬ思ひぬ
樋口一葉「うつせみ」1895、冒頭
坂口安吾堕落」1946、冒頭
1-5.
ほのぼの春こそ空に来にけらし天のかぐ山霞たなびく
(「新古今和歌集」13世紀初め
 間數玄關まで入れて手狹なれども吹とほし風入りよく廣々として植込木立茂ければ住居うつてつけ見えて場處小石川植物園ちかく物靜なれば少し不便にしてにはなき貸家ありけりはりしより大凡《おほよそ》ごしにも成けれどいまだに住人《すみて》さだまらでなきいと空しくなびく淋しかりき何處までも奇麗にて見こみ好ければうちには二人三人拜見とて來るもの無きにはあらねど敷金家賃三十限り取たてにて五十といふ夫れ下町相場とて折かへして來る無かりきさるほどに此ほど朝まだき四十近かるべき年輩《としごろ》紡績浴衣《ゆかた》少しさめたる着て至極そゝくさ落つき無き差配もと來たりて見たしといふ案内して其處此處戸棚など見せてあるく其等こと片耳にも入れで四邊《あたり》靜にさわやかなる喜び今日より直にお借り申まする敷金唯今置いて參りまして引越し夕暮いかにも急速で御座ります直樣掃除かゝりたう御座りますとて何の子細なく約束とゝのひぬ職業問へばいゑ別段これといふ御座りませぬとて至極曖昧答へなり人數聞かれて何だか四五御座ります七八にも成ります始終《とほし》ごたごたして御座りませぬといふ妙な思ひし掃除すみて日暮れがた引移り來たりし相乘りかけ姿つゝみて開きたる眞直に入りて玄關おろしければには見えじ思ひしげなれど乘り居たる三十利きし女中一人十八には未だ思はるゝやう病美人にも手足にも血の氣といふもの少しもなく透きとほるやうに蒼白きいたましく見えて折から世話やき來て居たりし差配此人《これ》先刻《さき》そそくさともとも受とられぬ思ひぬ
樋口一葉「うつせみ」1895、冒頭
1-6.
(御徒町凧作詞、森山直太朗作曲「生きてること辛いなら」2008)
1-8.
「と[格助詞・並列助詞・接続助詞・係助詞]」1-8.用例
1-10.
生き生けるもの、伊づれか歌をよまざりける
(「古今和歌集」913)
世にありあり、ここに伝はりたる譜といふものの限りをあまねく見合はせて
紫式部源氏物語平安中期
ありある人は皆浮雲の思ひをなせり
鴨長明方丈記」1212)
やがて渇くとて
吹かれちゃいられない
思うような人間じゃない
そうそんな人間じゃない
どうにかなる戯けても
どうにもならないことがある
これじゃまるでピエロ占い師
放った御影石
たかが言葉嘯けど
されど言葉摩訶不思議
かつてした玉手箱
にはある
化かし合い
それ眺める天邪鬼
何処も彼処も言うなれば極楽
足りない七並べ
朝焼け向こう 真実悲しいほど勝手なもん
生き生ける全て 注ぐ
枯れ大地罅割れる そこ降るのだろう
明日へと さあ進め 運命とは儚きあの旋律よう
生き生ける全て 注ぐ
枯れ大地罅割れる そこ降るのだろう
生き生ける全て 注ぐ
枯れ大地罅割れる そこ降るのだろう
思うような人間じゃない
そうそんな人間じゃない
もはや人間じゃない
(森山直太朗・御徒町凧作詞、森山直太朗作曲、中村太知編曲「生き生ける」2004)
2.
「と[格助詞・並列助詞・接続助詞・係助詞]」2.用例
3-1.
「と[格助詞・並列助詞・接続助詞・係助詞]」3-1.用例
3-2.
「と[格助詞・並列助詞・接続助詞・係助詞]」3-2.用例
3-3.
3-4-2.
たのめずば人をまつちの山なり寝なましものをいさよひの月
(「新古今和歌集」13世紀初め
ちと耳いたく聞いて下され
浮世草子江島其磧「風流曲三味線」1706)
4.
伊香保ろに天雲い継ぎかぬまづく人おたはふいざ寝しめとら
(「万葉集奈良時代
荒し男のいをさ手挟み向かひ立ちかなるましづみ出でて我《あ》が来る
(「万葉集奈良時代
5-1.
我が背子を莫越《なこし》の山の呼子鳥《よぶこどり》君呼び返せ夜のふけぬ
(「万葉集奈良時代
他国ひとくには住みあしとぞ言ふ速すむやけくはや帰りませ恋ひ死なぬ
(「万葉集奈良時代
5-2.
宍串《ししくし》ろ熟睡《うまい》寝しに庭つ鳥鶏《かけ》は鳴くなり
(「日本書紀」720)