其處(そこ)

09/03/2015 18:39

→「そこ(其処・其所)

用例

 停車場釣錢往復切符一所市川桃林案内と云ふ貰つて汽車のツタポカ/\暖いであつたから三等車こみ合つて暑かつた二等車では謠本廣げてふつて居る見うけた市川下りて付いて歩く直ぐ其處桃林不規則なついて居る入れまいしつらへた垣根嚴重で着物二つ三つかぎざきせねば桃下となるわけには行かぬのである曲りくねつて居るから見た窮屈でごちや/\して居るので一向に薄ひ樣な心持する再び本道出る中山こんにやくぶらさげ自轉車乘つて來る逢つた
明治364月7日日本
署名  クモ
伊藤左千夫市川桃花」1903、全文
 長いこと物蔭にはまだ殘つて居り村端れ一片《ひとつ》青んでゐない晴れたそことなく霞んで雪消《ゆきげ》泥濘《ぬかるみ》處々乾きかかつためいた薄ら温かく吹いてゐたそれ明治四十四月一日ことであつた
 學年始業式なので、S尋常高等小學校代用教員、千早健《ちはやたけし》平生より少し早目に出勤した白墨《チヨオク》汚れた木綿紋附擦り切れた長目穿いてクリクリした三分刈帽子冠らず――帽子有つてゐなかつた。――亭乎《すらり》とした眞直にして玄關から上つて行く早出生徒毎朝控所彼方此方から驅けて來て恭しく迎へる中には態々叩頭《おじぎ》する許《ばつか》り其處待つてゐるあつたその殊に多かつた平生三倍四倍……遲刻勝な成績惡いさへ交つてゐた。健直ぐ其等心々溢れてゐる進級喜悦想うたそして何がなく曇つた
 その解職願してゐた
石川啄木足跡」1909冒頭