いくらか(幾らか)

15/10/2017 19:39

アクセントくらか・いくらか]
1.
あまり多くない数量。いくぶんか。少しの数量。少し。多少。
小遣いの幾らかを寄付する 収入の幾らかを貯金する
2.
2-1.
数量・程度があまり多くないさま少し。多少。
幾らかやせたようだね 昨日より幾らか気分がよくなった
2-2.
[「いくらかでも」の形で。]
少しでも。多少なりとも。
幾らかでもお役に立ちたい

用例

1.
 一五九〇徳川家康そのころ江戸という名前知られていた今日東京入ったときここにはいくらか寂れたあるばかりでした二〇ほどうちそことても活気あるなり難船してここ訪れたフィリピン総督ドン・ロドリゴ・デ・ビベロこの都市計画褒め讃えてから見たところではスペイン家屋もっと美しいように見えるけれども入る日本ほう美しさにおいて上回る書きましたそのころ東京一五ぐらい人口持っていました
  家康このつくってから一〇〇ほど人口一〇〇超えるほど増えその頃八七だったロンドン五四だったパリ二五だったウィーンこれまた二五だったモスクワ一七だったベルリンしのぐ都市なりました一七世紀半ばから一九世紀半ばにかけて東京世界最大都市でした
  その一〇〇人口半分ほど全国各地から集められてきた中央政府管理ならびに護衛携わっているでしたあと半分町人職人でしたこの都市内部には農民ほんの少ししかいませんでした一七九四老中松平定信政策足りなくなった場合貯蔵用意できましたということはいざと言うときには五〇町人職人たちこの蓄えられた半年ほど食いつなぐことができるというわけでした
鶴見俊輔戦後日本大衆文化:1845~1980年」1984)
安部公房他人の顔1964冒頭
2-1.

 
たしか長春ホテルであつたと思ふそのから聞いたしかしそれそのとしてではなしにその長春事務所長してゐる出た時に、B画家らしいのんきな調子莞爾《にこにこ》と笑ひながら言つたのであつた。「、Sさんあゝいふ堅いしてゐるけれどもあれ中々隅に置けないんです
さう?」かう言つたには五十近いそれでゐて非常に若くつくつてゐる頭髪綺麗にわけた浮んだ
つい此間まで大連本社庶務課長してゐたんだが?」
庶務課長! Sさん――? それぢや、Yやつてゐる?」
さうだあそこ行つて見ました。Sあそこつい半年ほどまでゐたんですそのあと行つたんです
庶務課長から此処事務所長では左遷です?」
まアさういふわけです。S好いですけれどもそれ親切で趣味深くつてことわかるなどには非常にいゝなんですけれど――」B少し途切れて、「それ庶務課行くあの《へや》タイピストあるでせう?」
……」
あのゐるぢやないですけれども。Sさんそのタイピスト可愛がつてたうとう孕ませて了つたもんですから?」
ふむ?」いくらか眼を睜《みは》るやうにして、「あゝいふところにもさういふことあるのか? ふむ? 面白い? つまりさうするとゐるゐたやつたわけです?」
さうです
さうかな……。さういふこと沢山あるんです?」
 
かう言つたにはその大きな石造《せきぞう》建物一室――卓《テイブル》三脚並べた電話絶えず聞えて来るクツシヨン椅子置いてあるその向う後姿見せてタイピストカチカチやつてゐる一室さまはつきりと浮んだ
それで何うした? では囲つてでもあるのか
いや本社から此方《こつち》来るすつかり解決つけて来たらしい何でももう子供産んだとか言つた――」
よく早く解決出来た?」
だつて困るからなア――」B笑つて
そこに行くとあゝいふあるから何うにでもなる……」
さうかな――」
 
じつと考へ沈んだ思ひがけない人生事実といふことではなかつたけれども一種不思議な心持感じた。「ふむ!」と言つてまた振つた
それでその別品《べつぴん》?」
ちよつと白いだけですかう言つて笑つた
田山花袋(田山録弥)「アカシヤ1924冒頭