ある(有る・在る) 動詞・補助動詞

05/05/2016 14:59

1.
ラ][ありラ変
中世後期口語ではラ行四段一般的となる。「ある」は、広く、五感などを通して、空間的、時間的に事物・事柄の存在が認められるがおおもと。古くは関しても用いたが、現在ではふつう人間動物以外の事物についていい、人間動物については「いる」を用いる。しかし、「予想外の多くの参加者があった」「我々には強い味方がある」など、関しても「ある」が用いられることがあり、その場合は、「昔、男ありけり」(「伊勢物語平安時代)のように、概念化・抽象化された立場で捉えられていたり、所有の意識が認められていたりする。補助動詞としての「つつある」は英語などの進行形の直訳的表現。文語補助動詞「あり」は一部の副詞「かく」「しか」「」などや、助動詞の「」「べし」の連用形に付いて用いられることがある。「けり」「たり」「たり」「なり」「なり」「めり」などのラ変型の助動詞及び形容詞語尾「かり」、形容動詞語尾たり」「なり」などは、いずれも「あり」が他の要素と結合してできたもの。ふつう、存在する場合は「在」を、所有する場合は「有」の字を当てるが、かな書きにすることも多い。なお、「ある」の打消しは文語では「あらず」であるが、現代語・口語では「あらない」とは言わず、形容詞の「ない」を用いる。ただし、近世には、ごくまれに、「せく事はあらない」(浄瑠璃近松門左衛門心中宵庚申」1722)などの例もみられる。]
アクセントる]
1-1.

[何が
存在するかが問題場合。]
事物が
存在する。има; съществува
庭に池がある。В градината има езерце. 山にはまだ雪がある。В планината все още има сняг. その車には重大な欠陥がある。Колата има сериозен дефект. 何かいい方法があるといいのだが。Би било хубаво ако има някакъв добър начин.
1-2.

[その
もの存在すること自体は自明で、場所問題である場合。]
その
場所存在する。位置する。има; намира се
本社は東京にある。Централата на фирмата се намира в Токио. 沖ノ鳥島は日本最南端にある。О-в Окинотори се намира в най-южния край на Япония. 事故の責任は私にある。Отговорността/вината за инцидента е в мен.
1-3.

或る事柄がはっきり認められる。また、或る
状態置かていると認められる。съм/намирам се( в положение на)
非は先方にある。Грешката е в другите.(?) 土地は高値安定の傾向にある 大国の影響下にあるнамирам се под влияние на (държава) велика сила
1-4.

それによって決まる。それ次第である。左右される。съм в; завися от
解決の糸口は相手の出かたにある
1-5.

[その
存在客観的、抽象的なものとして捉え、誰が存在するかが問題場合。]
存在する。居る
昔々、ある所におじいさんとおばあさんがありました。Имало едно време един дядо и една баба. 異を唱える人もある。Има и хора, които са против/не се съгласни.
1-6.

この世に
生きている生存している。жив съм; съществувам
世にある間докато съм на този свят 先生のありし日をしのぶ
1-7.

[その
存在すること自体は自明のことで、場所問題である場合。]
或る
場所に身《み》を置く。また、特定《とくてい》の位置状態いる
現場にあって指揮に当たる 長年、会長の職にあった。Дълги години заемах позицията на президент. 病床にあるна легло съм 逆境にあってもくじけない/望みを捨てない 当時彼はパリにあって絵の勉強をしていた。По това време той беше в Париж и изучаваше рисуване.
1-8.

自分
ものや財産・付属物として持っている。所持・所有ている家族親戚友人などをもっている。притежавам;имам
彼には財産/選挙権/家族/力/影響力がある。Той има имущество/право на глас/семейство/сила/влияние. バラにはとげがある。Розата има бодли. 妻子のある身с жена и дете/деца サメには鋭い歯がある。Акулата има остри зъби. あの人は顔にほくろがある 用事があるのでお先に失礼する。Тръгвам си по-рано, тъй като имам ангажимент.
1-9.

身に付いたものとして
持っている。中に持つ。備わる。含まれる。
彼女には教養/気品/貫禄がある ニンニクには独特の匂いがある。Чесънът има специфична миризма.
1-10.

或る
考え記憶感覚気持ちなどを持っている
お願い/相談があるんだけど。Имам молба/има нещо, за което искам да се посъветвам. 言いたいことがあるимам да ти кажа нещо かすかな痛みがあるимам слаба болка 私にいい考えがある。Имам добра идея. 私はその説にはいろいろ疑問がある。Имам много въпроси по тази теория.
1-11.

[数量を
表す副詞受けて。]
その
の数《かず》・量《りょう》・重《おも》さ・長《なが》さ・時間などが…ということ表す
試験までまだ一週間ある。Има още една седмица до изпита. 彼は180センチある。Той има 180 см. (??) 頭が二つある蛇змия с две глави 重さが10トンもある岩скала, която тежи цели 10 тона (има маса цели 10 тона)
1-12.

が起こる。事柄が発生する。出来する。また、物事が行われる。има; случва се
昨夜、地震があった。Вчера имаше земетресение. 土砂崩れのあった現場място, където е имало свлачище これから会議/重大発表がある 一言、謝罪があってもいいだろう 彼女と彼との間には前に何かあったようだ。Преди между тях двамата явно е имало нещо. 二度あることは三度ある。Нещо, което се е случило(го е имало) два пъти, ще се случи (го има) и трети път.
1-13.

時間
が経つ。
ややあって口を開いた
1-14.

特定の語句と結び付いた
全体で、種々の意味表す
1-14-1.

[引用の「
」を受けた「とある」ので。]
書いてある。という。ということだ。
この条項には「…」とある メモには午後二時に来社するとある 命令とあればしかたがない 死んだとあればあきらめもつく
1-14-2.

[「とあって」の
で。]
状況
場合結果がそうであるので。(ということ)なので。
行楽シーズンとあって道路が相当混む 子供の日とあってどこの遊園地も親子連れでいっぱいだ 関係者全員合意の上とあっては反対もできない
1-14-3.

[「だけある」「だけのことはある」の
で。]
それにふさわしい
状態結果が得られること表す
自慢するだけあってよくできている さすが特訓しただけのことはある
1-14-4.

[「ことがある」の
で。]
場合
によっては...、経験をしている、などの表す
季節によってメニューの一部を変更することがあります。Част от менюто може да бъде променено в зависимост от сезона. 時に内容の一部を変更することがある 富士には何回も登ったことがある。Изкачвал съм връх Фуджи многократно.
1-14-5.

[「にあって(は)」の
で、人間集団・社会表す名詞受けて。]
その
範囲で、そこにおいて(は)、の表す
彼はわが党にあって随一の政策通だ わが党にあっては常に国民の要望にこたえる政策を作っていきたい
1-15
補助動詞
[種々の
付いて、そういう状態である、そういう性質もっている表す。「ある」の前に助詞入ることもある。]
1-15-1.
動詞連用形接続助詞」を添えた付いて他動詞受けることが多い。]
指定《してい》の
表す。→てある
1-15-1-1.
或る動作や行為などの
結果現在まで引き続いている表す
花が生けてある ドアが閉めてあるвратата е затворена
1-15-1-2.
何かに備えてすでに用意がなされている
こと表す
外にタクシーを待たせてある 軍を待機させてある 彼女には前もって伝えてある
1-15-1-3.
[「…にしてある」の
で。]
そうなっていないが、そうなったものとみなしている
こと表す
心配をかけないように、元気でいることにしてある
1-15-2.
動詞連用形接続助詞つつ」を添《そ》えた付いて。]
動作・作用が継続して
現在行われていること表す
梅のつぼみがほころびつつある 月がのぼりつつある 夕日が山の端に沈みつつある
1-15-3.
名詞助動詞」の連用形」を添えた付いて。]
物事の
説明で、そのような性質もっている、そのような状態・事態である、と判断する表す。また、或る物事と他の物事とが等しい関係にあることを表す。また、或る物事が何らかの類に属することを表す
1足す2は3である 
吾輩は猫である 人間は考える葦《あし》である  トマトはナス科植物である あたりは一面の銀世界である 彼はもう退職したはずである
1-15-4.
形容詞形容動詞連用形、または、その連用形助詞を添えた付いて。]
そういう
性質もっている、そういう状態であることを言い定める。
ここは静かである 常に美しくありたいと願う 悲しくはあるが、じっと耐えよう うれしくもあり、悲しくもあり 狭くはあっても楽しい我が家
1-15-5.
動詞連用形や動作性の漢語名詞などに付いて、多く「お...ある」「御《ご》...ある」ので。現代語ではややふざけた場合にしか用いない。]
その動作をする
に対する尊敬を表す
おいであれ 御笑覧あれ
1-15-6.
断定助動詞なり」「たり」の連用形」「」を添《そ》えたものに付いて。]
そういう
性質もっている、そういう状態であることを言い定める表す
1-15-7.
副詞かく」「しか」「」などに付いて。]
そういう
性質もっている、そういう状態であることを言い定める表す
1-15-8.
打ち消し助動詞」、推量助動詞べし」の連用形付いて。]
そういう
性質もっている、そういう状態であることを言い定める表す
1-15-9.
[「御《ご》…あらせられる」の
で。]
非常に高い
敬意表す
殿下が会場に御臨席あらせられる/伊勢神宮に御参拝あらせられる 
2.
動詞あり(有り・在り)」の連体形

→余り物に福がある・ありかた(在り方・有り形)・有る限り・有るか無きか・有るか無し・在るが儘《まま》・有る事無い事・有るにも有らず・一年の計は元旦にあり・上には上がある・腕に覚えがある・裏には裏がある・遠慮なければ近憂あり・壁に耳あり・烏に反哺《はんぽ》の孝あり・気がある・国破れて山河あり・心ここに在(/有)らず・沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり・死生命《めい》あり・信あれば徳あり・捨てる神あれば拾う神あり・生ある者は必ず死あり・ 積悪の家には必ず余殃《よおう》あり・積善の家には必ず余慶あり・男子家を出《いず》れば七人の敵あり・爪に爪なく瓜に爪あり・てある[連語]・敵は本能寺にあり・名がある・二度ある事は三度ある・人間至る所青山あり・残り物に福がある・初め有るものは必ず終わり有り・鳩に三枝の礼有り・花も実もある・一癖ある・一 癖も二癖もある・待てば海路の日和あり・待てば甘露の日 和あり・身に覚えがある・脈がある・身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ・楽あれば苦あり・我思う故に我在り

用例

1-1.
「ある(有る・在る)」1-1.用例
1-2.
1-5. 
「ある(有る・在る)」1-5.用例
1-7.
1-8.
「ある(有る・在る)」1-8.用例
1-9.
「ある(有る・在る)」1-9.用例
1-11.
1-12.
1-14-4.
 
それから岡田散歩出てこの通る見ぬことは殆ど無い岡田空想領分折々この闖入して来て次第に我物顔に立ち振舞うようになる自分通る待っているのだろうそれともなんの意味なく見ているので偶然自分合せることなるのだろうと云う疑問起るそこで湯帰り見たより遡ってあのから出していたことあったどうかと思って考えて見る無縁坂片側町一番騒がしい為立物師いつも綺麗に掃除してある寂しいであったと云う記念には何物無いどんな住んでいるだろう疑ったこと慥かにあるようだそれさえなんとも解決附かなかったどうしてもあのいつも障子締まっていたり降りていたりしてそのひっそりしていたようであるそうして見るとあの近頃附けて開けて自分通る待っていることなったらしい岡田とうとう判断した
森鷗外」1913)
1-15-1-1.
「ある(有る・在る)」1-15-1-1.用例
1-15-1-2.
「ある(有る・在る)」1-15-1-2.用例
1-15-2.
「ある(有る・在る)」1-15-2.用例
1-15-5.
正月五日、主上御元服
あつ
(「
平家物語」13世紀前半
少し御まどろみありける御夢に
(「太平記」14世紀後半
1-15-6.
一つ松人に
ありせば太刀佩《は》けまし
(「
古事記」712)
なかなかに人とあらずは酒壺になりにてしかも酒にしみなむ
(「万葉集奈良時代
1-15-7.
「ある(有る・在る)」1-15-7.用例
1-15-8.
あすよりはみ山隠りて見えずかも
あら
(「古事記」712)
かくばかり恋ひむとかねて知らませば妹をば見ずそあるべくありける
(「万葉集奈良時代