どうし(動詞)

18/12/2015 08:09

アクセント:どうしガ
国語《こくご》の品詞の一《ひと》つ。事物《じぶつ》の動作《どうさ》・作用・状態《じょうたい》・存在などを表すで、形容詞形容動詞とともに用言に属《ぞく》する。活用のある自立語で、文中《ぶんちゅう》において単独《たんどく》で述語になりうる。その言《い》い切《き》りの形《かたち》は、一般にウ段《だん》の音《おと》で終《お》わるが、文語ラ行変格活用に限《かぎ》り、「り」とイ段《だん》の音《おと》で終《お》わる。口語動詞には、五段上一段下一段カ変サ変の5種類《ごしゅるい》の活用形式があるが、文語動詞には、四段上二段下二段上一段下一段カ変サ変ナ変ラ変の9種類《きゅうしゅるい》の活用形式がある。глагол

どうしけい(動詞形)

用例

品詞の一つ。言語表現の中核である。
1. 認定の基準
古くは「動作・作用を意味する語」のように意味が用いられていたが、状態・関係などを表す動詞も多いので、意味ではなくて、形態あるいは文法機能を基準にする必要がある。形態的基準としては、語形の屈折ないし活用の体系がある。文法的機能の点からいうと動詞は時制(テンス)・相(アスペクト)・態(ボイス)・法(ムード)という文法的カテゴリーと密接に結び付いている。屈折言語においては、これらのすべてあるいは一部が語形変化のなかに組み入れられており、日本語のような膠着(こうちゃく)言語では助詞・助動詞などの小辞を付加することにより表される。さらに言語によっては、主語の人称・数に呼応して語形変化する。文のなかでは述部の中心となる。英語では過去分詞・現在分詞が、日本語では連体形が名詞を修飾する。日本語では形容詞も活用するが、命令形がない点で動詞と大きく異なる。
2. 形態的分類
フランス語・スペイン語などのロマンス諸語では、動詞により、多くの異なった屈折体系に属する。スペイン語では、屈折語尾部分が同一でも、語幹の形が異なると、異なった文法的働き(直説法か仮定法か)をなす。英語・ドイツ語では、大多数が規則変化(=弱変化)をし、残りがいくつかの型の不規則変化(=強変化)をする。日本語で規則変化にあたるのは口語の五段・上一段・下一段活用、文語の四段・上一段・上二段・下一段・下二段活用で、不規則変化にあたるのが各種の変格活用である。
日本語の伝統的な活用は仮名(子音+母音)を単位として体系化されているが、近年口語に関して、音素を単位にしてまったく異なった分析がなされている。つまり、規則変化の場合、語幹を子音で終わる子音語幹と母音で終わる母音語幹に二大別し、それに接続する活用部分は全体を通じて同一であるとする。ただし、接続に際して若干の形態変化規則が必要である。活用語尾は、直前の音が母音ならそのままの形で接続するが、子音ならば自らの頭子音を落とす。ただし-ta, -teは直前の子音をその音の種類に応じて、詰まる音に変えるか、あるいははねる音に変えて、それ自体は-da, -deに変わる。そのほか細かな点がすこしあるが省略する。そのようすは次の具体例に明らかである。
母音語幹の場合
tabe-ru, tabe-ta, tabe-reba, tabe-ro, tabe-te, tabe-sase, tabe-rare, tabe-yoo
子音語幹の場合
suber-u, subeQ-ta, suber-eba, suber-e, subeQ-te, suber-ase, suber-are, suber-oo

tob-u, toN-da, tob-eba, tob-e, toN-de, tob-ase, tob-are, tob-oo
この方式では、伝統的な活用の種類の違いは語幹の末尾音の違いに解消される。つまり、子音語幹が五段活用に、母音語幹が上一段・下一段活用にあたる。
3. 複合動詞
二つの動詞を結び付けてつくられる(前の動詞は連用形)もので、日本語に多い。二つの動詞の間の機能関係は次の三つの型に分類される。(1)[V1+V2] 二つの動詞は同じ重みをもつ。「跳びはねる」(跳んだりはねたりする)、「落ちこぼれる」(「こぼれ落ちる」ともいえる)。(2)[v1+V2] 前動詞が後動詞を修飾する。「切り倒す」(切ることにより倒す)、「殴り殺す」(殴って殺す)。(3)[V1+v2] 後動詞が前動詞を修飾する。この場合の後動詞は形式動詞とか補助動詞とよばれることがある。修飾の仕方を三つに分類する説がある。(イ)強意。「縮み上がる」「弱りきる」「誉めちぎる」(ハ)動作の方向。 「語り合う」「燃え広がる」「書き足す」(ハ)動作のおこり方。「読みかける」「読み続ける」「読みきる」「読みさす」。これらは相(アスペクト)の違いを表すが、相はさらに「読んでゆく」「読んでくる」「読んでしまう」の形でも表される。
4. 機能的分類
一般に、目的語をとるものを他動詞、とらないものを自動詞という。日本語にこの区別を認めない意見もあるが、認めるのがよいと考えられる。その根拠の一つとして、語形のうえで自・他が区別されている動詞が少なくないことがあげられる。前に「を」がくるものを他動詞とするという基準は成立しない。「家を出る」(「出す」という他動詞形あり)、「道を進む」(「進める」という他動詞形あり)のように、自動詞も「を」をとりうるからである。一方、「大きな体を湯に浸(つか)る」「顔に笑みが湛(たた)える」「壁に背をもたれる」のような実例があるが、これは自・他の区別に関して厳密さを欠く用法として、別扱いにする必要がある。要するに、自・他の区別は、形態・意味・文法の3点から総合的になされるべきものである。
英語では、一般の辞書にみられる自・他の区別は、意味や文法機能に関係なく、単に表面的になされており、目的語が あれば他動詞、それがなければ自動詞としている。しかし、意味機能を十分に考慮に入れると、本来の自・他と、派生した、単に表面的な自・他を区別する必要が生じる。(1)本来自動詞 Birds can fly.(鳥は飛べる)(2)本来他動詞 I am reading a novel.(私は小説を読んでいます)(3)派生自動詞 《目的語省略による》I am reading, now.(いま読書中です)、《目的語が主語のなかに取り込まれた場合》We met at the station.(私たちは駅で会いました)(4)派生他動詞 《自動詞の使役化》I want to fly a kite.(僕たこをあげたい)、《自動詞+場所目的語》I walked the streets of London.(ロンドンの街を歩きました)
5. 意味的分類
動詞は文法的機能とも関連したレベルで、幾種類かの意味的分類が可能である。その一つは、語義の相の違いに基づくもので、金田一春彦は日本語について4種類を区別することを提唱した。(1)状態動詞 「ある」「できる」など。「ている」をつけることができない。(2)継続動詞 「読む」「書く」など。「ている」をつけると、その動作が進行中であることを表す。(3)瞬間動詞 「死ぬ」「突く」など。「ている」をつけると、その動作・作用が終わって、結果が残っていることを表す。(4)第4種の動詞 「そびえる」「優れる」など。ある状態を帯びることを表すもので、「ている」をつけて用いる。
動詞によっては、文脈の助けで別の種類の動詞として用いられることがある。「読む」は(3)に属することがあり、「死ぬ」も「飢饉(ききん)のために、毎日たくさんの人が死んでいる」では(2)に属する。
動詞はその本来の用法(比喩(ひゆ)的用法・省略用法に対する)において、結び付きうる主語・目的語などに制約があるのが普通である。「始まる」「終わる」は「こと」主語を要求し、「もの」主語にはつかない。「食べる」は固形食物目的語を要求し、「刈る」は多量の密生した成長物を目的語に要求する。英語のcutは道具に刃物を要求するが、「切る」は「手で切る」といえるように、刃物を要求しない。
(国広哲弥「動詞」『日本大百科全書』1984-1994)