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創(きず)

17/12/2012 20:43

きず(傷・疵・瑕・創)

用例

数馬傍輩から、外記自分推してこのたび当らせたのだ聞くや否や即時に討死しよう決心したそれどうしても動かすこと出来ぬほど堅固な決心であった。外記ご恩報じさせると言ったということであるこのはからず聞いたのであるが実は聞くまでもない、外記薦めるにはそう言って薦めるにきまっているこう思う、数馬立ってもすわってもいられぬような気がする自分先代引立てこうむったには違いないしかし元服してからのち自分いわば大勢近習うち一人別に出色扱い受けていないには誰も浴しているご恩報じ自分に限ってしなくてはならぬというのはどういう意味言うまでもない自分殉死するはずであったのに殉死しなかったから命がけ場所やるというのである何時でも喜んで棄てるさきにしおくれた殉死代りに死のうとは思わない惜しまぬ自分なんで先代中陰果て惜しんだであろういわれないことである畢竟どれだけ入懇になった殉死するというはっきりしたない同じように勤めていた近習若侍うちに殉死沙汰ないので自分ながらえていた殉死してよいことなら自分よりもさきにするそれほどことにも見えているように思っていたそれにとうにするはず殉死せずにいた人間として極印打たれたのはかえすがえすも口惜しい自分すすぐこと出来ぬ汚れ受けたそれほど加えることあの外記でなくては出来まい。外記としてはさもあるべきことであるしかし殿様なぜそれお聴きいれになった。外記傷つけられたのは忍ぶこと出来よう殿様棄てられたのは忍ぶこと出来ない島原乗り入ろうとしたとき先代お呼び止めなされたそれ馬廻りものわざと先手加わるお止めなされたのであるこのたび当主怪我するなおっしゃるのはそれとは違う惜しいいたわれおっしゃるのであるそれなんのありがたかろう古い新たに鞭うたれるようなものであるただ一刻早く死にたい死んですすがれる汚れではない死にたい犬死でもよいから死にたい
森鷗外阿部一族」1913)
市太夫、五太夫相手きらわず交えているうち全身数えられぬほど受けたそれでも屈せずに棄てて抜いて切り廻っている。七之丞いつのまにか倒れている
森鷗外阿部一族」1913)
ちょうど卯の花真っ白に咲いている小さい枝折戸あるあけてはいって、権右衛門芝生突居た。光尚見て、「負った一段骨折りであったかけた黒羽二重衣服血みどれなってそれに引上げとき小屋踏み消したとき飛び散ったまだらについていたのである
いえかすり創でござりまする」権右衛門何者か水落したたかつかれた懐中していたあたって穂先それたわずかに鼻紙にじませただけである
森鷗外阿部一族」1913)
竹内数馬幼いには養子させて家督相続許されたこののち絶えた高見権右衛門三百千場作兵衛、野村庄兵衛五十加増受けた柄本又七郎へは米田監物《けんもつ》承って組頭内蔵之允《くらのすけ》使者やって賞詞あった親戚朋友よろこび言い来る、又七郎笑って、「元亀天正ころ城攻め野合せ朝夕同様であった阿部一族討取りなぞ茶の子茶の子茶の子じゃと言った立って正保元年、又七郎癒えて光尚拝謁した。光尚鉄砲預けて、「根治するように湯治したくばいたせまた府外別荘地つかわすから場所望めと言った。又七郎益城小池屋敷地もらったその背後藪山である。「藪山つかわそう、光尚言わせた。又七郎それ辞退した平日ご用立つ戦争でもある竹束たくさんいるそれ拝領しては済まぬというのであるそこで藪山永代御預けということなった
森鷗外阿部一族」1913)
阿部一族死骸井出の口引き出して吟味せられた白川一人一人洗ってみたとき柄本又七郎胸板つき抜かれた弥五兵衛受けたよりも立派であったので、又七郎いよいよ面目施した
森鷗外阿部一族」1913)