それほど(其れ程)

04/12/2015 18:55

アクセント:それほどノ
1.
副詞にも用いる。」
物事の状態や様子が、そこに示されている程度。特に、物事の程度が甚だしいこと、この上ないことを表す。それくらい。そんなに。そのくらいまで。
それほど行きたいなら行けばいい それほどの気持ちがあればひょっとしたらやれるかもしれない それほどまで思い詰めていたとは気づかなかった
2.
[下に打ち消しの語を伴って。]
物事の状態が思ったほどでないことを表す。とりたてていうほど。さほど(然程・左程)そんなに
それほどの人物では/もない 世間はそれほど甘くない

あれほど(彼程)これほど(此れ程・是程)

用例

1.
 数馬傍輩から、外記自分推してこのたび当らせたのだ聞くや否や即時に討死しよう決心したそれどうしても動かすこと出来ぬほど堅固な決心であった。外記ご恩報じさせると言ったということであるこのはからず聞いたのであるが実は聞くまでもない、外記薦めるにはそう言って薦めるにきまっているこう思う、数馬立ってもすわってもいられぬような気がする自分先代引立てこうむったには違いないしかし元服してからのち自分いわば大勢近習うち一人別に出色扱い受けていないには誰も浴しているご恩報じ自分に限ってしなくてはならぬというのはどういう意味言うまでもない自分殉死するはずであったのに殉死しなかったから命がけ場所やるというのである何時でも喜んで棄てるさきにしおくれた殉死代りに死のうとは思わない惜しまぬ自分なんで先代中陰果て惜しんだであろういわれないことである畢竟どれだけ入懇になった殉死するというはっきりしたない同じように勤めていた近習若侍うちに殉死沙汰ないので自分ながらえていた殉死してよいことなら自分よりもさきにするそれほどことにも見えているように思っていたそれにとうにするはず殉死せずにいた人間として極印打たれたのはかえすがえすも口惜しい自分すすぐこと出来ぬ汚れ受けたそれほど加えることあの外記でなくては出来まい。外記としてはさもあるべきことであるしかし殿様なぜそれお聴きいれになった。外記傷つけられたのは忍ぶこと出来よう殿様棄てられたのは忍ぶこと出来ない島原乗り入ろうとしたとき先代お呼び止めなされたそれ馬廻りものわざと先手加わるお止めなされたのであるこのたび当主怪我するなおっしゃるのはそれとは違う惜しいいたわれおっしゃるのであるそれなんのありがたかろう古い新たに鞭うたれるようなものであるただ一刻早く死にたい死んですすがれる汚れではない死にたい犬死でもよいから死にたい
森鷗外阿部一族」1913)
 日曜午前十時三階花子部屋ではニコライ堂鐘の音よくきこえた狭い部屋汚ながる山川に対して、花子その思いもかけぬ西洋風な音色だけ自慢できるしたカランコロンと鐘の音のびやかにひびきわたってくるその方角あった少しはなれて建っている裏手三階かくれてドォム見えないなる高々と中空かがやきだすドォム十字架青色ネオンむろんそこからは見られなかった日曜その時刻その目をさますことなければここ有名な教会堂あたりとは気づかぬにちがいないそれほどこの部屋ありさま白々と清潔な延ばしている聖《ひじり》橋や、重々しく四角ばってうずくまる湯島聖堂それに異国風な緑色ふくらんでいる教会丸屋根その一角ひろびろと打ち展《ひら》かれた美しい風景とは似ても似つかぬものであった
武田泰淳部屋1951冒頭